以下、論文紹介と解説です。

Alexandrino AS, Santos R, Melo C, Bastos JM, Postiaux G. Caregivers’ education vs rhinopharyngeal clearance in children with upper respiratory infections: impact on children’s health outcomes. European Journal of Pediatrics 2017; 176:1375-83.

保育所に通う3歳児までの138人を対象に、対照群 38人、教育群 34人、介入群 35人、教育および介入群 31人の4群に分け、風邪にともなうイベントを比較した。

背景・目的

■上気道感染症(Upper Respiratory Tract Infections; URTI)は、有効な薬物療法がなく、小児に非常に多い感染症である。

■本研究では、小児の呼吸器感染症に関する保護者の健康教育の効果と、URTIの小児における鼻咽頭クリアランス手順の有効性を比較することを目的とした。

 

方法

■保育所に通う3歳児までの138人を対象に要因研究を実施した。

■子どもたちは、対照群(CG)(n=38)、教育群(EG)(n=34)、介入群(IG)(n=35)、教育および介入群(E+IG)(n=31)の4群に分けられた。

■保護者は1ヶ月間日誌をつけた。

管理人注

介入に関して簡単に翻訳します。

健康教育セッション

教育グループ(EG、E+IG)の保育者は、保育所で呼吸器感染症に関する健康教育セッション(HES)に参加した。
HESは、介護者のニーズに応じて多段階のプロセスとして開発された。
HESは、以下の5つの領域をカバーしている。

(A) 急性呼吸器感染症(ARI)の予防:一次および二次予防策
(B) ARIの最初の兆候と症状:鼻汁、咳、鼻閉の正しい管理
(C) ARIの悪化の兆候:発熱、食欲不振、脱水、呼吸困難の増加の兆候に関する正しい対処
(D) 投薬
(E)鼻腔洗浄法:小児の年齢に応じた適切な鼻腔洗浄法の実演と共有、鼻腔吸引器とネブライザーの使用に関する注意。

HESは、呼吸理学療法士が保育所で10~15人の保護者の小グループに実施し、平均時間は1時間30分だった。
最後に、参加者は情報の要約が書かれた小冊子を受け取った。
HESは、別の研究でも評価され、介護者のニーズを満たし、ARIに関する知識と態度を向上させたと結論づけられている。

 

介入手順

介入群(IGおよびE + IG)の子どもは、呼吸理学療法士が行う標準的な介入プロトコルに参加し、生理食塩水(NaCl 0.9%)による鼻腔灌流を実施した。

子どもは、頭を少し前に曲げ、洗浄する鼻孔の側に傾けた状態で座らせた。
もう片方の鼻孔にも同様の処置を行った。
次に、鼻咽頭を完全に洗浄するために、子どもの口を短時間閉じ、深い鼻腔の吸引を促した。

 

結果

■その結果、群間で有意差が認められた。

■下気道呼吸器感染症(CG 29.4%; EG 10.7%; IG 3.8%; E + IG 0.0%; p = 0.014)、急性中耳炎(CG 32.4%; EG 7.1%; IG 11.5%; E + IG 7.7%; p = 0.014)、医療機関への受診(CG 70.6%;EG 42.9%;IG 38.5%;E + IG 30.8%;p=0.021)、抗生物質の使用(CG 44.1%; EG 7.1%; IG 23.1%; E + IG 15.4%; p = 0.006)、保育所の欠席日数(CG 55日、EG 22日、IG 14日、E+IG 6日、p=0.020)、就労不能日数(CG 31日、EG 20日、IG 5日、E+IG 1日; p=0.021)、鼻腔洗浄技術(CG 41.4%; EG 78.6%; IG 57.7%; E + IG 84.6%; p=0.011)だった。

論文から引用。

Fig. 2

 

結論

■本研究では、小児の呼吸器感染症に関する保護者の健康教育と鼻咽頭クリアランスプロトコルを組み合わせた場合に、小児の健康アウトカムに最も良い影響を与えることが示された。

 

わかっていたこと

■ 上部呼吸器感染症は、小児に非常によく見られる疾患ですが、未だに有効な薬理学的治療法が確立されていません。

■ これは子供と家族にとって大きな負担となり、抗生物質の使用量を増加させます。

 

新しくわかったこと

■ 本研究は、小児の急性呼吸器感染症における介護者の健康教育の効果を、非薬理学的介入と比較して分析することを目的とした初めてのものです。

■ 子どもの健康に関する介護者のエンパワーメントを促し、病気の負担や受診、抗生物質の使用を減らすなど、子どもの健康アウトカムにポジティブな影響を与えることが示されました。

保護者への風邪への対応を教育し、鼻汁吸引(+生理食塩水併用)を推奨することで、風邪の悪化の頻度を減らすことができるかもしれない。

■ 保護者教育とともに鼻咽頭クリアランス手順を考えると、呼吸器感染症(上気道感染症・下気道感染症・中耳炎)の発生率が最も低いとしています。

 

■ この中でも、鼻洗浄の有効性が目立っています。

■ 鼻洗浄は、炎症性メディエーターと相互作用し、浮腫の軽減や鼻咽頭粘膜の治癒を助け、鼻咽頭から細菌、アレルゲンなどを除去し、呼吸器疾患から子供を保護できるとしています。

■ さらに、深部鼻腔吸引の効果が指摘されており、このクリアランスは鼻腔洗浄だけでは完全に達成されないと論じられています。

 

■ 生理食塩水を少量注入してからしっかり奥まで鼻汁吸引を行う…、決して簡単ではないかもしれませんが、ここまで効果があるならやっぱり鼻汁吸引器は必要かもしれません。

 

使い方は、公式動画があります。

 

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