以下、論文紹介と解説です。

Goh YX, Tan JSQ, Syn NL, Tan BSW, Low JY, Foo YH, et al. Association between pet ownership and physical activity levels, atopic conditions, and mental health in Singapore: a propensity score-matched analysis. Scientific Reports 2020; 10:19898.

webによるアンケートに参加した 823人に対し、ペット飼育がが精神的健康やアレルギーにどのような影響を与えるかを調査した。

背景

■ 既報では、ペット飼育が人間の身体活動レベルにプラスの影響を与えることが多くなっているが、欧米や日本の多くの研究結果では一貫性がない。

■ また、ペット飼育が精神的健康やアレルギーにどのような影響を与えるかについても議論があり、人口統計学的に異なるサブグループが異なる影響を経験をしているかどうかは不明である。

 

方法

■ この横断的研究は、自記式のオンラインアンケートを通じて参加者(n = 823)を調査したものである。

■ 回答者の傾向スコアをマッチさせたサブセット(n = 566)において、ペット飼育と非ペット飼育のアウトカムを比較し、サブグループ分析が行われた。

 

結果

■ ペット飼育と非ペット飼育に、身体活動レベルやメンタルヘルススコアに差はなかった。

■ サブグループ分析では、非ペット飼育者と比較して、ペットを主に世話している人は、中強度・強度の身体活動をそれぞれ週当たり14.1(95%CI 2.79-25.3)および19.0(95%CI 4.70-33.3)多く、SF-36による感情的な健康(β = 2.7, 95% CI 0.100-5.32) および活動スコア(β = 3.8, 95% CI 0.410-7.27 )がより高く報告された。

■ 年齢は、ペット飼育と感情的な健康、活動スコア、社会的機能スコアとの関連において有意な修飾因子であり、それぞれ39歳、35歳、39歳以上でスコアが大きくなった(interaction p = 0.043, 0.044, 0.042 )。

■ 最後に、ペット飼育はアレルギー性鼻炎の悪化と関連し、ペットの飼育中止はアレルギー性鼻炎とアトピー性皮膚炎の症状の改善と関連していた。

 

結論

■ 本調査は、東南アジアにおけるペット飼育が公衆衛生に与える影響を調べた初めての研究であり、その結果は、ペット飼育から得られる潜在的な利益を示唆する文脈的なニュアンスを加えるものである。

 

ペットを飼うことは、メリットとデメリットをバランスよく捉える必要性がある。

■ 特に、犬の飼育と身体活動のレベルと関連しているという結果は興味深いなと思われます。他のペットと比較して、飼い主が犬と行う可能性が高い身体活動、すなわちハイキング、水泳、アジリティトレーニングなどによる可能性が指摘されています。

■ 一方で、アレルギー疾患の診断を受けたひとでは、アレルギー性鼻炎の症状はペットを飼うことで悪化し、アレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎の症状はペットを飼わなくなるとその後改善することが指摘されています。

■ アレルギーのあるお子さんに対し、すでに飼っているペットを手放すことを強くすすめるものではありませんし、個人的に日常の診療としても『ペットの共存をどのようにするか』を考えながら、より丁寧に治療を行うという方針としています。

 

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