以下、論文紹介と解説です。

Bastien BC, Gardner C, Satyaraj E. Influence of time and phenotype on salivary Fel d1 in domestic shorthair cats. J Feline Med Surg 2019; 21:867-74.

64匹の猫から唾液サンプルを1日2回、1日おきに1年間採取し、主要アレルゲンであるFel d1を確認した。

目的

■ Fel d1は、猫アレルゲンに敏感なヒトに影響を与える可能性のある主要なアレルゲンであり、猫の唾液中や毛から検出される。

■ そこで、典型的な家猫(すなわち、去勢した国内のショートヘアの猫)における唾液中の Fel d1 の変動とその変動に関連する要因について検討した。

 

方法

■ 2ヶ所(アメリカ・ミズーリ州とカナダ・オンタリオ州)で、64匹の猫から唾液サンプルを1日2回、1日おきに1年間採取した。

■ 唾液中のFel d1濃度はイムノアッセイを用いて測定された。

■ どの要因がFel d1濃度に有意に影響するかを評価するために、相関関係と線形混合効果モデル分析が行われた。

 

結果

■ 唾液中のFel d1量は、猫内および猫間で有意に変化した。

■ 1年間の猫の平均値は0.4~35μg/mlで、平均値が高いほどSDも大きいという相関があった(P <0.001)。

■ その日の最初の採取は、午後の採取より高い傾向があった(P <0.001)。

性別、毛色、体格は猫のFel d1平均生成量と関連しなかったが、高齢の猫は唾液中のFel d1濃度が低い傾向があった(P <0.001)

■ 4つのサンプルから得られたFel d1量は、安定してすくない量たFel d1を産生する猫を特定する上で信頼できるものだった。

 

結論と関連性

■ 国内のショートヘアの猫において、唾液中のFel d1産生量の幅は広く、連続的であることが観察された。

■ 特に、1年を通して安定した少ない産生量である猫は、外見ではなく、数回の唾液サンプルの分析によって識別することができる

 

 

 

低アレルゲンの猫種はないものの、アレルゲンの放出が少ない猫はいるといえる。

■ すくなくとも、『低アレルゲンの猫種』はないといえ、一方で『アレルゲンが少ない個体』はあるということです。

■ とはいえ、飼う前からアレルゲンを調べるわけにはいかないでしょうし、ペットはやはり判断がむずかしい…ということでしょう。

■ 猫の免疫療法に関しては、まだ確定した結果はすくなく、なかなか治療に関しては難しい面があります(製剤も日本には現状ではありません)( Virtanen T. Immunotherapy for pet allergies. Human Vaccines & Immunotherapeutics 2018; 14:807-14.)。

■ 一方で、猫にあたえる餌により、猫アレルゲンを減らすというコンセプトの報告があり、研究の進展が期待されているようです(Satyaraj E, Wedner HJ, Bousquet J. Keep the cat, change the care pathway: a transformational approach to managing Fel d 1, the major cat allergen. Allergy 2019; 74:5-17.)。

■ 猫アレルギーのある方への福音となる報告がでてくることを期待したいところですね。

 

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