以下、論文紹介と解説です。

Posa D, Perna S, Resch Y, Lupinek C, Panetta V, Hofmaier S, et al. Evolution and predictive value of IgE responses toward a comprehensive panel of house dust mite allergens during the first 2 decades of life. Journal of Allergy and Clinical Immunology 2017; 139:541-9.e8.

German Multicenter Allergy(MAS)コホート研究に参加した722人の児において、生後6ヶ月と18ヶ月時のダニへの曝露と、1歳から20歳時のダニの感作パターンを比較した。

背景

■ Dermatophagoides pteronyssinus(ヤケヒョウヒダニ)の多数のアレルゲン分子に対するIgE反応の進展は、十分わかっていない。

 

目的

■ ヤケヒョウヒダニの12分子に対するIgE反応の、出生から成人までの進展パターンを明らかにし、その決定因子と臨床的関連性を検討することを目的とした。

 

方法

■ 1990年に開始された出生コホートであるGerman Multicenter Allergy Studyの参加者722人の臨床データと血清について調査した。

■ ダニアレルギーや喘息に関連する現在のアレルギー性鼻炎(allergic rhinitis; AR)の診断は、1歳から13歳および20歳における年1回の面談に基づいて行われた。

■ 1歳、2歳、3歳、5歳、6歳、7歳、10歳、13歳、20歳に採取した血清から、ヤケヒョウヒダニの抽出物と12分子に対するIgE抗体を、それぞれImmunoCAPとマイクロアレイ技術によって検査した。

■ 生後6ヶ月と18ヶ月のダニへの曝露は、ハウスダスト中のDer p 1重量/重量濃度を測定することによって評価した。

 

結果

■ 722人中190人(26.5%)がヤケヒョウヒダニ抽出物に対するIgE抗体価(0.35 kUA/L以上)を有していた。

■ 20歳時点のIgEは、Der p 2、Der p 1、Der p 23(A群、有病率40%以上)が最も多く、次いでDer p 5、Der p 7、Der p 4、Der p 21(B群、有病率15~30%)、Der p 11、Der p 18、clone 16、Der p 14、Der p 15(C群、有病率10%未満)となっていた。

■ IgE感作は、ほぼ例外なくA群分子で始まり、B群、C群へと順次拡大した。

出生時から20歳までのヤケヒョウヒダニ12分子に対するIgE反応の進展(n = 191)。

■ IgE感作の早期開始、親の花粉症、ダニへの高い暴露は、より幅広い多分子IgE感作パターンと関連していた。

論文から引用。ダニ特異的IgE反応に及ぼす年齢と感作開始時期の影響(n = 191)。

■ 最も幅広いIgE感作(すなわちABC)に達した参加者は、感作されていない参加者に比べて、ダニに関連するARおよび喘息のリスクが有意に高かった。

■ 5歳以下でのDer p 1またはDer p 23に対するIgEは、学齢期の喘息を予測した。

 

結論

■ 親の花粉症、幼少期のヤケヒョウヒダニアレルゲンへの暴露は、ヤケヒョウヒダニ分子に対するIgEへ幅広感作を促進し、その結果、現在のダニ関連ARや現在/将来の喘息を予測した。

■ これらの結果は、ダニに対するIgE感作がARや喘息に進行するのを防ぐための予測アルゴリズムや予防策を生み出す可能性がある。

感作が感作を呼ぶ、とはいえそうだが…

■ この研究結果から考えると、早期の感作はダニへの強くさらされると、その後に幅広く感作が進むと読めます。

■ この理由はいくつかあると思えますが、ひとつはTh2サイトカインが皮膚のバリア機能を下げるという点にあるかもしれません( Beck LA, Cork MJ, Amagai M, De Benedetto A, Kabashima K, Hamilton JD, et al. Type 2 Inflammation Contributes to Skin Barrier Dysfunction in Atopic Dermatitis. JID Innovations 2022:100131)。

 

■ そして、喘息やアレルギー性鼻炎のリスクを高めると言えるでしょう。

■ かといって、ダニを低減するような環境整備でダニ感作をへらすことができるかどうかは十分に明らかにできていなくて、複数の環境整備が必要なのか…というと厳しいかもしれません。

■ 感作が感作をよぶとはいえるのですが、どのように臨床応用するかは難しいところといえ、患者さんへお話する内容には配慮が必要なテーマと言えそうです。

 

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