以下、論文紹介と解説です。
Makita E, Sugawara D, Kuroda S, Itabashi K, Hirakubo Y, Nonaka K, et al. Potential of Thymus and Activation-Regulated Chemokine (TARC) as a Prognostic Biomarker of Food Protein-Induced Enterocolitis Syndrome (FPIES) Caused by Egg Yolk. Int Arch Allergy Immunol 2022:1-5.
卵黄関連食物蛋白誘発胃腸症(卵黄FPIES)患児12人に関し、嘔吐後のTARC値などと予後を1年毎の食物負荷試験で検討した。
背景
■ 本邦における卵黄関連食物蛋白誘発胃腸症(food protein-induced enterocolitis syndrome;FPIES)は,最近のいくつかの研究により報告されている。
■ 以前、卵黄を含む固形食品に起因するFPIESの診断および症状の重症度評価に、嘔吐後のthymus and activation-regulated chemokine; TARC)値が有用であることを報告した。
■ しかし、TARC の予後バイオマーカーとしての有用性を検討した研究はない。
目的
■ 本研究の目的は、卵黄経口食物負荷試験(oral food challenge test; OFC)の結果、嘔吐後のTARC値、臨床症状、指標となるイベント後の結果を評価し、OFC結果の予測因子をレトロスペクティブに検討することだった。
方法
■ このレトロスペクティブな研究は、卵黄FPIES患者12人を対象とした。
■ 研究対象には、卵黄FPIESの以下の長期管理プロトコルを必須とした。
■ 救急部を受診し、FPIES の診断基準を満たした患者を対象とし、卵黄完全除去後 6-12 ヶ月に卵黄 OFC を実施した。
■ OFCの結果が陽性であった場合、陰性になるまで1年ごとにOFCを受けた。
■ 計20のエピソード(12回の診療科受診と8回のOFC陽性)を分析した。
■ 次のOFC陽性群と次のOFC陰性群における、嘔吐後のTARC値を含血液検査データや症状の重症度などを比較した。
■ さらに、追跡期間中の耐性を解析した。
結果
■ 次のOFC陽性群および陰性群の月齢の中央値(範囲)は、それぞれ11(6-33)カ月および10(7-21)カ月だった。
■ 血清TARC値(pg/mL)の中央値(範囲)は次のOFC陽性群で5,208(2,009-8,147)、次のOFC陰性群で1,803(905-3,754)と有意に高かった(p = 0.004 )。
■ その他の血液学的結果には有意差はなかった。
■ 次のOFC陽性群は次のOFC陰性群に比べ重症度が高かった(p=0.026)。
■ 寛解率は24ヶ月で約30%、36ヶ月で80%だった。
結論
■ 嘔吐後のTARC値は卵黄FPIESの約1年後の短期予後を予測することができ、卵黄FPIESの管理に有用であると考えられる。
卵黄による新生児・乳児食物誘発胃腸症は、今後留意する疾患と言えるでしょう。
■ このブログでは、新生児・乳児食物誘発胃腸症に関する記事はあまり書いてきませんでした。
■ というのも、病型分類も海外と異なった状況があって、やや混乱した状況があったからです。
■ しかし、食物アレルギーガイドラインが改訂されて、新生児乳児消化管アレルギーなどの病名から、新生児・乳児食物誘発胃腸症に確定され、FPIES、FPIAP、FPEなど病型分類がしっかりしてきて、海外との違いが明記されたことなどから、研究が進んでくることが予想されます。
■ そして、卵黄に対する新生児・乳児食物誘発胃腸症に関しては、普段の診療として扱うことが増えるでしょう。
■ 一方で卵アレルギーの発症リスクは早期開始で減少することが示唆されてきていることから、今後そのバランスなどを考えていくことになるでしょう。
■ 個人的には、現状では卵アレルギー発症予防のほうが大きなメリットが有ると考えています。
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