以下、論文紹介と解説です。

Dantzer J, Dunlop J, Psoter KJ, Keet C, Wood R. Efficacy and safety of baked milk oral immunotherapy in children with severe milk allergy: A randomized, double-blind, placebo-controlled phase 2 trial. Journal of Allergy and Clinical Immunology 2022; 149:1383-91.e17.

3-18歳の牛乳アレルギー患者30人をBaked milk経口免疫療法群とプラセボ群にランダム化し、12ヶ月間の有効性などを比較した。

背景

■ 牛乳アレルギーは幼児に最も多くみられる食物アレルギーであり、現在のところ治療法はない。

■ これまでの経口免疫療法の研究では、有効性が示されているが、副作用の発生率が高い。

 

目的

■ Baked milkアレルギー児に対するBaked milk経口免疫療法(baked milk oral immunotherapy; BMOIT)の安全性と有効性を評価することを目指した。

方法

■ 参加者(3-18歳)をBMOITまたはプラセボを12ヶ月間投与する群にランダム化した。

■ 有効性は、治療12ヶ月後の二重盲検プラセボ対照食物負荷試験により評価した。

■ また、安全性、QOL(生活の質)、メカニズムについても評価した。

結果

■ BMOIT参加者15人中11人(73%)が主要エンドポイントに達し、12ヶ月の経口免疫療法後に4044mgの焼きミルクタンパク質を許容したのに対し、プラセボでは15人中0人(0%)だった。

■ 最大耐量中央値および試験開始からの変化量の中央値は、BMOIT群がプラセボ群より有意に高かった(最大耐量中央値4044mg vs 144mg; P = .001;最大耐量の変化量中央値3900mg対0mg; P = .0001)。

■ 投与量に関連する反応は一般的だったが、両群とも95%以上が軽症だった。

■ いずれの群でも、試験開始からの牛乳特異的IgEおよびβラクトグロブリン特異的IgEの有意な変化は認められなかった。

■ BMOIT群では、牛乳特異的IgG4が有意に増加し、カゼイン特異的IgEが減少した。

■ 代理報告による食物アレルギーのQOLでは、感情的影響の領域でのみ有意差が認められ、BMOITと比較してプラセボ投与中の方がより改善された。

■ BMOIT群では、ほとんどの小児および青年が少なくとも1つの領域で改善したことを直接的に報告した。

 

結論

■ BMOITは忍容性が高く、12ヶ月の治療で相当レベルで脱感作を誘導した。

Baked milkによる免疫療法の有効性はあるといえる。ただし、限界も認識する必要性もある。

■ Baked milkで行われた先行研究では、十分な結果が得られているとはいえず、個人的にはBaked milkによる免疫療法の効果は限定的と考えています。

■ その中で、今回発表された研究結果はかなりの有効性を示したことになります。

■ この理由として、Discussionのなかで、『先行研究よりも、大きく少ない開始用量(初期用量0.1 mg対3 mg、最大1日開始用量25 mg対120 mg)から始め、より緩やかに用量漸増させる』という点が改良点とされていました。

■ それでも、問題点はいくつかあります。

■ 論文内でも、Baked milkで評価しているので耐性の変化を正確に報告することができないことと述べられています。

■ そして、免疫的な変化が不十分であり、Baked milkは非加熱牛乳のOITに比べて免疫原性が低いのではないかと考察されています。

■ 言えることは、Baked milkは効果が不十分かもしれないこと、食べられるのはBaked milkであるという制限があるといえます。

 

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