以下、論文紹介と解説です。
Papi A, Chipps BE, Beasley R, Panettieri RA, Israel E, Cooper M, et al. Albuterol–Budesonide Fixed-Dose Combination Rescue Inhaler for Asthma. New England Journal of Medicine 2022.
吸入ステロイドを含む維持療法を受けている12歳以上のコントロール不良の中等症~重症喘息患者計3132人の患者を、アルブテロール180μgとブデソニド160μgの固定した量の合剤投与群、アルブテロール180μgとブデソニド80μgの固定した量の合剤投与群、アルブテロール180μg投与群にランダム化し、重症喘息発作イベントリスクを評価した。
背景
■ 喘息症状の悪化に伴い、患者は一般的に短時間作用型β2-アゴニスト(short-acting β2-agonist; SABA)レスキュー療法に頼ることになるが、SABAは悪化した炎症に対処できないため、患者は重症喘息増悪のリスクにさらされている。
■ アルブテロールとブデソニドの合剤をレスキュー薬として使用すると、アルブテロール単独と比較して、喘息の重症化リスクが減少する可能性がある。
方法
■ 吸入ステロイドを含む維持療法を受けているコントロール不良の中等症~重症喘息患者を対象に、アルブテロールとブデソニドの併用によるレスキュー薬の有効性と安全性をアルブテロール単独と比較する多国籍第3フェーズ二重盲検ランダム化イベントドリブン試験を実施し、試験中も継続された。
■ 成人および青年(12歳以上)を1:1:1の割合で、3つの試験群のいずれかにランダム化した。
■ すなわち、アルブテロール180μgとブデソニド160μgの固定した量の合剤投与群(各用量90μgと80μgを2回投与)(高用量併用投与群)、アルブテロール180μgとブデソニド80μgの固定した量の合剤投与群(各用量90μgと40μgの2回投与)、そしてアルブテロール180μg(各用量90μgの2回投与)(アルブテロール単独群)である。
■ 4~11歳の小児を対象に、低用量併用群またはアルブテロール単独群にランダム化した。
■ 有効性の主要評価項目は、intention-to-treat集団で行われたtime-to-event解析における、最初の重症喘息発作イベントだった。
結果
■ 計3132人の患者がランダム化、そのうち97%が12歳以上だった。
■ 重症喘息の増悪リスクは,高用量併用群のほうがアルブテロール単独群よりも26%有意に低かった(ハザード比,0.74;95%信頼区間[CI]0.62 ~ 0.89;P=0.001 ).
■ 低用量併用群のハザード比は、アルブテロール単独群と比較して 0.84(95% CI 0.71~1.00; P=0.052)だった。
■ 有害事象の発生率は、3つの試験群で同等だった。
結論
■ さまざまな吸入ステロイド維持療法を受けているコントロール不良の中等症~重症喘息患者において,アルブテロール 180 μg とブデソニド 160 μg の合剤を必要に応じて使用すると、アルブテロールのみを必要に応じて使用した場合と比較し重症喘息増悪のリスクは有意に低かった。
■ (Avillion社からの資金提供。MANDALA ClinicalTrials.gov 番号: NCT03769090.opens in new tab.)
吸入ステロイド+SABAの合剤が、重症喘息発作をへらす可能性が示されたといえるが…
■ SABAより安全性が高いと考えられる長時間作動性ベータ刺激薬(LABA)に関して、枠組み警告がFDAから提示され、最終的に外された経緯は以前ご紹介しました。
■ それでもやはり、LABAでさえ注意喚起される方もいらっしゃいますし、個人的にもLABAやSABAを毎日使用することに関しては、留意する必要があると思っています。すなわち、LABAやSABAは可能であれば減量を考慮することを念頭に入れてよいと考えています。
■ 今後、吸入ステロイド+SABA、吸入ステロイド+LABAの比較、そして長期的な安全性などを検討していく必要性があるかもしれません。
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