以下、論文紹介と解説です。

1. Zuberbier T, Dörr T, Aberer W, Alvaro M, Angier E, Arasi S, et al. Proposal of 0.5 mg of protein/100 g of processed food as threshold for voluntary declaration of food allergen traces in processed food—A first step in an initiative to better inform patients and avoid fatal allergic reactions: A GA²LEN position paper. Allergy 2022; 77:1736-50.

食品1kgあたり5mg以下のアレルゲンタンパク質に対する、致死的な反応が報告されているかどうかを評価するため、システマティックレビューを実施した。

背景

■ 食物アナフィラキシーは、一般的に、アレルゲンを含む食品を個人の許容閾値を超えて意図せずに摂取することによって誘発される。

■ EUでは、食品の原材料として使用される14種類の主要アレルゲンの表示が義務付けられているが、潜在的なコンタミネーションの表示に関する法的な定義はない。

■ そのため、「微量に含まれる可能性がある」といった予防的なアレルゲン表示がよく行われている。

■ しかし、これでは消費者にとっては、コンタミネーションは個人の閾値以下であれば何も情報が得られないため、不満足なものである。

■ 食品業界や技術者との議論では、申告されたすべてのコンタミネーションが食品100gあたり0.5mgのタンパク質という閾値以下であることを示す自主申告を使用することが提案された。

■ この濃度は、ほとんどの患者の閾値以下であることが知られており、ほとんどの食品製造において技術的に保証することが可能である。

■ しかし、重症のアレルギー患者がこの閾値以下のコンタミネーション食品を誤って摂取した場合、致命的なアナフィラキシー反応が起きないことを評価することも重要だった。

■ そこで、加工食品の最大分量1kgはどの食事よりも多いため、十分な安全マージンがあるとし、5mg以下のタンパク質に対する致死的反応が報告されているかどうかを評価するためにシステマティックレビューを実施した。

 

方法

■ MEDLINEとEMBASEを2021年1月24日まで検索し、14種類の主要食物アレルゲンのいずれかが致死的またはアナフィラキシー反応を誘発することが報告されている負荷試験と症例報告について、タンパク質5mgの摂取以下で発生したかどうかを評価した。

■ 結果について専門家のコンセンサスを得るため、デルファイ法を実施した。

 

結果

■ 検索に含まれた210研究において、タンパク質5mg摂取以下で報告された致死的なアナフィラキシー反応の報告は確認されなかった。

■ しかし、誘発試験や症例報告では、卵、魚、ルピナス、牛乳、ナッツ、ピーナッツ、大豆、ごまのアレルゲンで5mg以下の重篤な反応が報告されている。

管理人注
ルピナスとは、ピーナッツと同じ科に属するマメ科植物で、ルーピンやハウチワ豆とも呼ばれます。

 

結論

■ このレビューのために調査した文献によると、0.5mg/100g未満の14種類の主要食物アレルゲンの相互コンタミネーションは、標準的な量の食物を摂取する場合、ほとんどの食物アレルギー患者に危険を及ぼすことはないと考えられると述べられている。

■ そこで、加工食品のパッケージに「この製品は、原材料リストに記載されたアレルゲンを含み、この製品100gあたり0.5mg未満の濃度の他のコンタミネーション(例えばナッツ類など)を微量に含む可能性があります」という自主表示を行うことを提案する。

■ このレベルの二次コンタミネーションの回避は、ほとんどの加工食品で技術的に達成可能であり、この声明は消費者に対する明確で有用なメッセージとなる。

■ しかし、自主的な宣言は法的拘束力のある解決策への第一歩に過ぎないことは明確に認識される。

■ このため、閾値に関するさらなる研究が望まれる。

欧州からも一定の基準が示されたことになるが、この基準をどのように社会に浸透していくかが次のステップとして必要となり、『基準よりさらに重篤な方』をどのように基準内としていくことができるかが焦点となっていくと思われる。

■ 欧州からも、一つの目安としての基準が提示されたことになります。

■ もちろん、食物アレルギーに関しても重症度はさまざまで、この基準でも症状がはっきり出現する方もいらっしゃるでしょう。

 

論文から引用。IgE 依存性食物アレルギーのある患者のリスクを階層化した図があります(Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice 2022; 10:59-70.)。きわめて重篤な方をどのように安全性を高めるかが必要と言える。

Details are in the caption following the image

 

■ しかし、一定の基準を策定することはまた重要です。

■ すべての医療行為でいえることですが、『完全な』安全性をもとめることは困難であり、基準がないほうがリスクはより高くなるでしょう。

■ 今後、免疫療法を考えつつ、より微量しか食べられない方を安全な領域に引き上げていくかが、今後の焦点のひとつといえるかもしれません。

 

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