以下、論文紹介と解説です。

Douglass JA, Lodge C, Chan S, Doherty A, Tan JA, Jin C, et al. Thunderstorm asthma in seasonal allergic rhinitis: The TAISAR study. Journal of Allergy and Clinical Immunology 2022; 149:1607-16.

オーストラリアのメルボルンにて、過去に雷雨喘息と診断され、かつ/または自己申告で季節性アレルギー性鼻炎と診断された成人を288人に対し、雷雨喘息の危険因子を検討した。

背景

■ 雷雨に伴う喘息の異常発生は、個人および救急隊に大きな影響を及ぼしてきた。

■ 雷雨喘息(thunderstorm asthma; TA)を発症する人の大多数には季節性アレルギー性鼻炎(Seasonal allergic rhinitis; SAR)があるが、SARのある人におけるTAの危険因子に関するエビデンスはほとんどない。

 

目的

■ SAR患者集団において、TAの既往や病院受診の危険因子を特定することを目的とした。

 

方法

■ この多施設研究では、オーストラリアのメルボルンにて、過去にTAと診断され、かつ/または自己申告でSARと診断された成人をリクルートした。

■ SAR患者におけるTA歴の危険因子を特定するため、臨床情報、スパイロメトリーの結果、白血球数、ライグラス花粉特異的(RGP-sp)IgE抗体価、呼気一酸化窒素を測定した。

 

結果

■ SAR患者228人のうち、SARのみある群(I-SAR群)が35%(228人中80人)、TA症状があるものの治療のための通院をしていない群(O-TA群)が37%(228人中84人)、TAで通院している群(H-TA群)が28%(228人中64人)だった。

■ H-TA群は、全例が喘息の診断歴があると報告された。

■ O-TA群とH-TA群の関連因子をロジスティック回帰分析を実施した結果、FEV1低値とAsthma Control Questionnaireスコアが1.5より高いことがH-TAと関連することが示唆された。

■ 血中RGP-sp IgE抗体価、好酸球数、呼気一酸化窒素高値はO-TA、H-TAと有意に関連していた。

■ Receiver operating curve(ROC)解析では、RGP-sp IgE抗体価が10.1 kU/Lより高く、気管支拡張前FEV1が90%以下であることがH-TAリスク増加のバイオマーカーとなることが示唆された。

論文より引用。 雷雨喘息による入院を予測するROC 曲線。
A 好酸球数、ROC曲線下面積=0.6595
B RGP-sp IgE、ROC曲線下面積=0.7015
C FeNO、ROC曲線下面積=0.6144
D 気管支拡張薬吸入前のFEV1%予測値、ROC曲線下面積=0.7234
E Asthma Control Questionnairescore、ROC曲線下面積=0.7335

 

結論

■ 臨床検査により、SAR患者におけるTA既往のリスクを特定することができ、患者ごとの治療の推奨につなげることができる。

 

雷雨喘息は世界各地で報告はあるものの、メルボルンで最大の発生がある。

■ メルボルンにおける雷雨喘息の異常発生は、それまで最大の発生であった1994年6月3日のロンドンでの発生を大きく上回ったものでした。

■ 他の地域(バーミンガム、ノッティンガム、ケンブリッジ(英国)、ナポリ(イタリア)、カルガリー(カナダ)、ワガワガとメルボルン(オーストラリア))でも異常発生が報告されていますが、メルボルン程のイベントではありませんでした(D'Amato G, Annesi-Maesano I, Cecchi L, D'Amato M. Latest news on relationship between thunderstorms and respiratory allergy, severe asthma, and deaths for asthma. Allergy 2019; 74:9-11.)。

■ 日本ではどうかというと、あまりはっきりと雷雨喘息というイベントとしては報告があまりないようです。

■ 天気が悪くなったら喘息…という話とはちょっとことなる病態で、地形などいくつかの条件をそろえて発症するものです。

 

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