以下、論文紹介と解説です。

Zambrano LD, Newhams MM, Olson SM, Halasa NB, Price AM, Orzel AO, et al. BNT162b2 mRNA Vaccination Against COVID-19 is Associated with Decreased Likelihood of Multisystem Inflammatory Syndrome in US Children Ages 5–18 Years. Clinical Infectious Diseases 2022DOI.

5~18 歳の小児において、MIS-C患者と対照者でワクチン接種の影響があるかを比較検討した。

背景

■ 小児多系統炎症症候群(Multisystem inflammatory syndrome in children; MIS-C)は、SARS-CoV-2感染と関連しており、相当罹患率を伴うと考えられている。

■ SARS-CoV-2感染やcoronavirus disease 2019(COVID-19)のワクチン接種による予防は、MIS-Cの可能性を減少させるかもしれない。

 

方法

■ 2021 年7 月1 日から 2022 年4 月7 日に入院した 5~18 歳の小児の多施設症例対照公衆衛生調査において、MIS-C患者と SARS-CoV-2 陰性で入院した対照者で、完全なワクチン接種(BNT162b2 ワクチンを入院前 28 日以上 2 回接種)である率を比較検討した。

■ これらの関連は、多変量ロジスティック回帰を用いて、年齢層、ワクチン接種の時期、デルタ株とオミクロン株が優勢な時期ごとに検討された。

 

結果

■ MIS-C症例 304人(280人[92%]ワクチン未接種)と対照者 502人(346人[69%]ワクチン未接種)を比較した。

■ MIS-Cの発症は、ワクチンの接種確率の低下と関連した。

■ すなわち、5~11歳(aOR 0.22; 95% CI 0.10~0.52)、12-18歳(aOR 0.10 95% CI 0.05~0.19 )、デルタ(aOR 0.06; 95% CI 0.02~0.15 )とオミクロン(aOR 0.22; 95% CI 0.11~0.42 )のそれぞれの変異株優位な時期それぞれで、ワクチン接種により低下していた。

■ この関連は、12~18歳では2回目の投与後120日以降も持続した(aOR 0.08; 95%CI 0.03~0.22)。

■ 全MIS-C 患者のうち、187 人 (62%) が集中治療室を必要とし、ワクチン適格患者の280 人 (92%) のはワクチン接種を受けていなかった。

 

結論

■ BNT162b2の2回接種により、5~18歳の小児におけるMIS-C発症の可能性は低下した。

■ MIS-Cのワクチン対象入院患者の大多数ワクチン未接種だった。

 

MIS-Cは、デルタ株よりオミクロン株のほうがリスクは低い可能性があり、さらに予防接種でリスクを低減する報告がある。

■ オミクロン株の流行はいままでにない規模です。そのため、MIS-Cの増加も懸念されます。

■ しかし一方で、すこし安心材料としては、デルタに比較してオミクロンの方がMIS-Cの発生に対するリスクが低そうだという報告があります(Levy N, Koppel JH, Kaplan O, Yechiam H, Shahar-Nissan K, Cohen NK, et al. Severity and Incidence of Multisystem Inflammatory Syndrome in Children During 3 SARS-CoV-2 Pandemic Waves in Israel. Jama 2022;327:2452-4.)。

■ そして今回の検討と同様、予防接種によりMIS-Cののリスクを減らしうるのではないかとう別の報告もあります( Holm M, Espenhain L, Glenthøj J, Schmidt LS, Nordly SB, Hartling UB, et al. Risk and Phenotype of Multisystem Inflammatory Syndrome in Vaccinated and Unvaccinated Danish Children Before and During the Omicron Wave. JAMA Pediatr 2022;176:821-3.)。

■ ワクチンの効果がみとめられるというのは、対策をとることができるともいえるでしょう。

 

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