以下、論文紹介と解説です。
Chaoimh CN, Lad D, Nico C, Puppels GJ, Wong XFCC, Common JE, et al. Early initiation of short-term emollient use for the prevention of atopic dermatitis in high risk infants – the STOP AD randomised controlled trial. Allergy;n/a.
生後4日のハイリスク乳児321人を、生後8週間まで保湿剤を塗布する群と通常ケア群にランダム化し、1歳までのアトピー性皮膚炎の発症リスクを比較した。
背景
■ 乳幼児期に皮膚バリアを保護することは、アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis; AD)を予防する可能性がある。
■ そこで、生後2ヶ月から毎日エモリエントを使用することで、12ヶ月のハイリスク児のAD発症が減少するかどうかを調査した。
方法
■ 本試験は、単施設2群医師盲検ランダム化比較試験である(NCT03871998)。
■ ADのハイリスク(親がAD、喘息、アレルギー性鼻炎の既往歴)と特定された成熟児を生後4日以内にリクルートし、生後8週間まで、特に乾燥しやすくADになりやすい皮膚のために調整されたエモリエント剤を1日2回塗布(介入群)、または通常のスキンケア(対照群)に1:1の比率でランダム化した。
オーツ麦、脂肪酸、セラミドが配合されているようです。
PEBBLES試験に使用されているモイスチャライザーは極めて高価ですが、この試験で使用された製品は75mlで1100円くらいでした(海外サイトで)。
■ 主要アウトカムは、生後12ヵ月時点の累積AD発生率だった。
■ 生後6ヶ月未満ADは、ADの臨床的存在に基づいて診断された。
■ 生後6~12ヵ月のADの診断には、UK Working Party診断基準が適用された。
結果
■ 321人の乳児がランダム化され(介入161人、対照160人)、61人が脱落した(介入41人、対照20人)。
■ 生後12ヵ月時のADの累積発生率は、介入群32.8% vs 対照群46.4%、p = 0.036[相対リスク0.707(95%CI 0.516~0.965)]だった。
論文から引用。保湿剤を塗布した群のほうがアトピー性皮膚炎の発症率が低い。
■ 介入群の乳児1人が、エモリエント剤との関係が疑われる発疹を発症したため、試験から脱落した。
■ 介入期間中の皮膚感染症の発生率に介入群と対照群の間に有意差はなかった(5.0% vs. 5.7%、P>0.05)。
結論
■ 本研究は、生後2ヵ月までの毎日の特別なエモリエント剤の使用開始が、ハイリスク乳児の生後1年間のADの発症を減少させることを証明した。
保湿剤の定期塗布によるアトピー性皮膚炎の発症予防には、『条件』があるように思われる。
■ 個人的には、『保湿剤の定期塗布』がアトピー性皮膚炎の発症リスクを低減するであろうと考えています。
■ ただし、それには条件があると思っています。
■ たとえば、以下をいう点です。
2)保湿剤の使用回数・使用アドヒアランス → 全身に塗布
3)保湿剤が有効な群は、そもそもバリア機能が低い群 → 全員に有効と言うわけではない
■ 今回ご紹介した研究結果は、『より早いほうが有効』『モイスチャライザーが有効では』といった点を挙げていました。
■ このSTOP AD試験では、生後4日以内にランダム化され直ちに保湿剤の塗布が開始されました。
■ しかし、BEEP試験では、エモリエント剤の使用を開始した年齢の中央値(IQR)は11日であり、11%は生後3週間から使用を開始していました。
■ さらにPreventADALL試験では、生後2週間から介入を開始しています。
■ そして、セラミドベースの保湿剤がよいのではないかと考察されていました。
基本的に医療者向けで、申し訳ありませんが、質問には基本的にお答えしておりません。
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