以下、論文紹介と解説です。

Geba GP, Li D, Xu M, Mohammadi K, Attre R, Ardeleanu M, et al. Attenuating the atopic march: Meta-analysis of the dupilumab atopic dermatitis database for incident allergic events. Journal of Allergy and Clinical Immunology 2022.

12試験で得られたアレルギー関連イベントを17のアレルギーカテゴリーに分類し、デュピルマブvsプラセボの罹患率比を比較した。

背景

■ アトピー性皮膚炎に始まり、食物アレルギー、気道疾患を経て、より幅広いアレルギー疾患に発展するのが一般的である。

■ しかし、その経過を変えるような介入は示されていない。

 

目的

■ AD患者におけるデュピルマブとプラセボを比較し、新規または悪化したアレルギーのイベント獲得率を明らかにする。

 

方法

■ 12の臨床試験で得られたアレルギー関連イベントを、17のアレルギーカテゴリーに分類し、ベースラインからの免疫グロブリンE(IgE)の変化を規定した。

■ 新規/悪化したイベントは、アトピーマーチの1ステップとみなした。

■ 治療効果は、デュピルマブvsプラセボの罹患率比(incidence rate ratios ;IRRs)を、メタアナリシスにより評価した。

 

結果

■ プールされたAD試験の期間は4-52週間(1359人年、n=2296デュピルマブ、n=1229プラセボ、年齢中央値35歳)だった。

■ AD発症年齢の中央値は2歳だった。

■ ベースラインのアレルギー疾患負荷は、両群間で同等だった。

■ デュピルマブはプラセボに対して、新規/悪化するアレルギーのリスクを34%(IRR 0.66; 95% 信頼区間 [CI] 0.52-0.84) 、新規アレルギーのリスクを37%(IRR 0.63; 95% CI 0.48-0.83) 減少させた。

■ IgEカテゴリーの変移を考慮すると、新規/悪化したアレルギーの合成IRRは54%減少した(IRR 0.46; 95% CI 0.36-0.57)。

■ これらの治療上の有益性は、治療が終わった後のフォローアップ調査における治療中止で逆転することはなかった。

 

結論

■ アトピーマーチを示唆するアレルギー症状の獲得/悪化は、コントロールが不十分な成人/青年期のAD研究集団で観察された。

■ デュピルマブによる治療は、プラセボに対して新規/悪化したアレルギーイベントを少なくした。

■ IgEのカテゴリー変化を含めることで、有益性が増加した。

デュピルマブが、その後のアレルギー疾患のリスクを減らすという結果。ただ…

■ デュピルマブの使用で、その後のアレルギー疾患の発症リスクを減らすという結論でしたが…

■ グラフィカルアブストラクトに示されるように、おおきく下がっているようにみえるのは、『喘息』『そう痒症』などで、そもそもの効果をみている可能性もあるのかもしれない…と思いました。

■ しかし、生物学的製剤がその後の自然歴を変えうる可能性は十分にあり、さらに低年齢での使用であれば可能性は高まるのではないかと個人的には考えています。

■ 今後の研究結果を待ちたいと思います。

 

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