以下、論文紹介と解説です。

Hourihane JO, Allen KJ, Shreffler WG, Dunngalvin G, Nordlee JA, Zurzolo GA, et al. Peanut Allergen Threshold Study (PATS): Novel single-dose oral food challenge study to validate eliciting doses in children with peanut allergy. J Allergy Clin Immunol 2017; 139:1583-90.

ピーナッツアレルギーのある小児381人に対し、5%の児が陽性症状をきたすと予想されるピーナッツタンパク質1.5mgの負荷試験を行い、結果を確認した。

背景

■ アレルゲン食品の誘発量(Eliciting doses; ED)は、特定の集団内の被験者の閾値の分布によって定義することができる。

■ ED05 は、アレルギー患者の 5%に反応を引き起こす用量である。

■ ピーナッツの予測される ED05 は、ピーナッツタンパク質 1.5 mg(ピーナッツ全体では 6 mg)である。

 

目的

■ ピーナッツの ED05(1.5 mg)の予測値を検証するため、単回投与試験を実施した。

 

方法

■ 3施設においてピーナッツアレルギーのある小児を対象に、過去の反応の重症度に関係なく、前向きに参加を要請した。

■ ED05単回投与陽性の特定には、あらかじめ設定した客観的な反応基準を使用した。

 

結果

■ 518人(平均年齢6.8歳)の小児が対象となった。

■ 参加者381人(74%)と非参加者137人(26%)に、また各施設でリクルートされた被験者に、人口統計学的および臨床的な有意差は確認されなかった。

■ 378人(男児206人)が研究を完了した。

■ ほぼ半数がアレルゲンのラベルに注意を払わないと報告した。

■ 245人(65%)が、ピーナッツの単回投与に全く反応を示さなかった。

■ 67人(18%)が、客観的な所見を伴わない主観的な反応を報告した。

■ 58人(15%)が、所定の基準に達しない軽度かつ一過性の徴候を示した。

■ 8人(2.1%; 95%CI 0.6%-3.4%)だけが、客観的で関連の可能性のあるイベントとして所定の基準を満たした。

■ 8人のうち4人は抗ヒスタミン剤の内服のみで、エピネフリンを投与された子どもはいなかった。

■ 食物アレルギーに関連した生活の質は、結果にかかわらず、ベースラインから負荷試験の1ヵ月後まで改善した(η2 = 0.2, P < 0.0001)。

■ ピーナッツにおける皮膚プリックテスト反応やピーナッツ・Ara h 2特異的IgE抗体価は、ピーナッツED05に対する客観的反応性とは関連がなかった。

 

結論

■ 1.5 mg のピーナッツタンパク質の単回投与により、ピーナッツアレルギーの患者のうち、予測される 5% 未満の患者に客観的反応が認められた。

■ この単回投与経口食物負荷試験は、結果に関わらず、臨床的に安全であり、患者に受け入れられると思われる。

■ この方法は、日常的に利用されているピーナッツ皮膚プリックテスト反応や特異的IgE抗体価では鑑別できない最も高い感受性である食物アレルギー患者を特定するが、この単回投与法は個々の患者のリスク評価についてはまだ検証されていない。

ピーナッツ1.5mgで症状が出現する可能性は2.1%(95%CI 0.6%-3.4%)と推測されたが、個々のリスクを評価することはやはり難しい。

■ ピーナッツタンパク量1.5mgがどれくらいかと考えるとすると、ピーナッツ1粒は約1g(=1000mg)ですから、1000分の6粒、雑にいえば、100分の1粒弱(=0.006粒)の負荷量と言えます。

■ もちろん『極めて微量でも症状がある方』もいらっしゃることも想定はするべきですが、このような微量負荷の安全性に関しては、さらに検討していく必要性があると考えられます。

■ 個々のリスクは、確率のみで求めていくことは簡単ではないからです。このあたりが食物アレルギーの難しいところといえましょう。

 

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