以下、論文紹介と解説です。

Kabashima K, Matsumura T, Komazaki H, Kawashima M, Group NJaS. Nemolizumab plus topical agents in patients with atopic dermatitis (AD) and moderate‐to‐severe pruritus provide improvement in pruritus and signs of AD for up to 68 weeks: results from two phase III, long‐term studies. British Journal of Dermatology 2022; 186:642-51.

中等症から重症のそう痒症のコントロールが不十分な 13 歳以上のアトピー性皮膚炎患者にネモリズマブを最大68週間使用する2試験から、有効性と安全性を検討した。

背景

■ インターロイキン(IL)-31は、炎症反応に影響を与え、アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis; AD)における表皮バリア破壊に関与し、そう痒に重要な役割を果たす。

■ IL-31 受容体 A に対するヒト化モノクローナル抗体である ネモリズマブは、16 週間の投与で AD 患者のそう痒を軽減することが判明している。

 

目的

■ 中等症から重症のそう痒症のコントロールが不十分な 13 歳以上の AD 患者を対象に、ネモリズマブの長期有効性と安全性を検討する。

 

方法

■ 2つの長期第IIIフェーズ試験において、ネモリズマブ60mgを4週間隔で皮下投与した。外用薬は併用した。

■ JP01試験では、ネモリズマブまたはプラセボを16週間投与した後、52週間の延長試験を行い、全例にネモリズマブを投与した(ネモリズマブ/ネモリズマブ群およびプラセボ/ネモリズマブ群)。

■ JP02試験では、52週間にわたりネモリズマブを投与した。

■ 両試験とも、8週間のフォローアップ期間を設けた。

 

結果

■ JP01試験のネモリズマブ/ネモリズマブ群、プラセボ/ネモリズマブ群、JP02試験のネモリズマブ群は、それぞれ143例、72例、88例だった。

■ ネモリズマブ/ネモリズマブ群では、投与開始から68週目までに、そう痒症のビジュアルアナログスケール(66%減少)およびEASIスコア(78%減少)に臨床的に有意な改善がみられた。

論文から引用。

(a)そう痒VASスコアおよび(b)EASIスコアの変化率(intention-to-treat)。

詳細は画像の後のキャプションに

■ QoL(生活の質)の指標は、ネモリズマブ初回投与後に改善し、改善はフォローアップ期間中も維持された。

論文から引用。

生活の質を示す指標である(a) ISIスコアが7以下、(b) DLQIスコアが、試験開始からフォローアップ期間終了まで4ポイント以上減少した患者の割合(修正intention-to-treat)。

Details are in the caption following the image

■ 長期安全性プロファイルは、これまでの研究と一致しており、予期せぬ遅発性の有害事象はなかった。

論文から引用。

試験開始からフォローアップ期間終了までのステロイド外用薬・および/またはタクロリムス外用薬の1日当たりの使用量(修正intention-to-treat)。

Details are in the caption following the image

 

結論

■ 中等症から重症のそう痒症のコントロールが不十分なAD患者において、ネモリズマブ60mg4週間ごとの投与と外用薬の併用により、そう痒症、AD症状およびQoLの改善が最長68週間継続し、良好な安全性プロファイルを示した。

 

小児のアトピー性皮膚炎に使用できる生物学的製剤は、現状ではネモリズマブのみ。

■ かゆみは、生活の質を大きく下げることが知られており、今後、皮膚の症状&かゆみの2つの指標を考慮しながらアトピー性皮膚炎の治療をとらえていくという考え方がでてきています。

■ かゆみスコア(NRS)をアトピー性皮膚炎の重症度指標として重視する動きがでてきていることもそれを示唆します。

■ 現状で小児の年齢でアトピー性皮膚炎に使用できる生物学的製剤はネモリズマブに限られますし、今後私も習熟する必要性があると考えています(現状では当院にはいっていないという問題がありますが…)。

 

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