以下、論文紹介と解説です。

Walsh EE, Peterson DR, Falsey AR. Human Metapneumovirus Infections in Adults: Another Piece of the Puzzle. Archives of Internal Medicine 2008;168:2489-96.

前向きに登録された3つの成人(19~40歳の若年者、65歳以上の健康な成人、ハイリスク成人)、入院集団において、4回の冬季(1999年から2003年の11月15日から4月15日)におけるヒトメタニューモウイルス感染を確認し、発生率と臨床的影響を、同じ集団におけるA型インフルエンザやRSウイルス感染症の発生率と比較検討した。

背景

■ 毎年冬になると,高齢者や基礎疾患を有する患者において,呼吸器系ウイルスは入院を含む重篤な呼吸器疾患の大きな割合を占める。

■ そこで、新たに同定されたウイルスであるヒトメタニューモウイルス(HMPV)の成人における発生率と臨床的影響について報告する。

 

方法

■ 前向きに登録された3つの成人(19~40歳の若年者、65歳以上の健康な成人、ハイリスク成人)、さらに入院集団において、4回の冬季(1999年から2003年の11月15日から4月15日)におけるHMPVへの感染を確認した。

■ その発生率と臨床的影響を、同じ集団におけるA型インフルエンザおよびrespiratory syncytial virus(RSウイルス)感染症の発生率と比較検討した.

 

結果

■ 逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応および血清学的検査により、3つの前向きに調査された外来患者コホートにおいて、毎年2.2%から10.5%のHMPV感染が確認された。

■ 無症状感染が多く、各コホートで少なくとも38.8%が感染していた.

■ 症状が出た場合は、典型的な上気道炎であったが、入院を必要とするハイリスクの患者も数人いた。

■ 入院患者1386人のうち,HMPVは年によって8.5%(範囲:4.4%~13.2%)で確認された。

論文から引用。ヒトメタニューモウイルス(HMPV)感染症の流行パターン。

■ 重複感染者は22.9%あった。

■ 喘鳴は80%に認められ、インフルエンザに比べより普通に認められた。

論文から引用。
入院患者におけるヒトメタニューモウイルス(HMPV)(n=91)、RSウイルス(n=109)、インフルエンザA型(n=138)の臨床症状の比較(重複感染は除く)。

■ 集中治療室への入院が12%、人工呼吸器の使用が11%と、インフルエンザやrespiratory syncytial virus感染と同程度の割合だった。

 

結論

■ HMPVは,あらゆる年齢層の成人においてよくみられる感染症であり、無症状であることが多いものの入院を必要とする重篤な感染症に至ることもある。

■ A型インフルエンザやRSウイルスと同様に、HMPVも高齢者における冬期の呼吸器疾患の負担を大きくする要因である。

■ ウイルス性呼吸器感染症は、あらゆる年齢の成人によく見られるもので、一般に小児期によく見られるウイルスの再感染であるが、高齢者や心肺に基礎疾患を持つ人では重症化する可能性がある。

■ A型インフルエンザおよびrespiratory syncytial virus(RSV)は、これらの疾患のかなりの割合を占めており、成人におけるそれらの影響については比較的よく知られている。

■ パラインフルエンザウイルス、コロナウイルス、ライノウイルス、アデノウイルスなどの他の病原体も、これらの集団における呼吸器疾患の負担に多少なりとも寄与している。

■ 最近、小児の呼吸器疾患の原因として同定されたヒトメタニューモウイルス(HMPV)は、成人の呼吸器疾患との関連も指摘されているが、その全体的な臨床的意義はまだ十分に解明されていない。

■ ヒトメタニューモウイルスは、2001年にオランダで、他の病原体が分離できなかった乳幼児から採取された呼吸器培養液の保存液から初めて同定されまた。

■ パラミクソウイルス科(ニューモウイルス亜科)に分類されるエンベロープ型RNAウイルスで、RSウイルスやパラインフルエンザウイルスに近縁のウイルスである。

■ 発見以来、毎年冬季になると、RSVに類似した喘鳴や気管支炎を特徴とする幼児への感染が広く報告されている。

■ しかし、多くの小児呼吸器系ウイルス病原体と同様に、HMPVの感染によって不完全な免疫が誘導され、再感染はすべての年齢で後に発生する。

■ 老人ホームでの集団発生や入院中の高齢者での重症化が報告されているが、成人におけるHMPV疾患の完全な疫学と臨床スペクトラムは確立されていない。

■ 本報告では,入院中・外来中の若年者および高齢者における4年連続の冬期のHMPV感染症の発生率と臨床的影響について述べた.

■ 感染は、健康な若年者、高齢者、ハイリスクの成人、急性の呼吸器症状により入院し、呼吸器感染症について前向きに評価されたひとに確認された。

 

ヒトメタニューモウイルス感染症は、成人でも注目されている。

■ 2015年のNEJMに、米国シカゴとナッシュビルの5つの病院における成人の肺炎により入院した原因を確認した報告でも、ヒトメタニューモウイルスはそれなりに高い原因ウイルスとして同定されています。

年齢層別の、入院を必要とする市中肺炎の推定年間病原体別発生率(Jain S, Self WH, Wunderink RG, Fakhran S, Balk R, Bramley AM, et al. Community-Acquired Pneumonia Requiring Hospitalization among U.S. Adults. New England Journal of Medicine 2015;373:415-27.)。

 

■ ただ、一般的にはヒトメタニューモウイルスの迅速検査の保険適用は6歳未満までです。

■ もちろん、『症状が軽い』場合は迅速検査の理由はありませんので、やはり病歴が重要であるといえます。

 

 

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