以下、論文紹介と解説です。

金城 優美 他. 鶏卵感作乳児に対する微量鶏卵早期導入の安全性の検討. 日本小児アレルギー学会誌 2020;34:351-8.

生後6ヶ月で卵白に感作されている卵未摂取児に2分加熱炒り卵0.2gを負荷し、陽性率を後ろ向きに検討した。

背景

■ 卵白感作陽性の乳児に対する鶏卵の早期導入法は定まっていない.導入前のスクリーニング経口負荷試験(OFC)や導入後の自宅摂取の安全性について前方視的に検討した.

 

方法

■ 生後6か月で卵白感作陽性の鶏卵未摂取例に対し加熱全卵0.2g OFC(1st OFC)を行った.

■ 1st OFC陰性例に対し加熱全卵0.2gの摂取を開始,生後9~11か月に卵白1/4個OFC(2nd OFC)を行った.

■ 各OFC結果と自宅摂取の安全性を評価した.

 

結果

■ 1st OFC陽性は15/63例(23.8%)で,陰性48例中42例が自宅摂取を開始し1例が中途脱落した.

■ 8/41例(19.5%)に自宅摂取で軽微な皮膚症状を認めた.

■ 2nd OFC陽性は4/41例(9.8%)であった.

■ 各OFC陽性例は陰性例と比較しオボムコイドsIgE値が高かった.

 

結論

■ 卵白感作陽性の乳児への加熱全卵0.2g OFCは陽性割合が高く,陰性例でも一部に自宅摂取中に軽微な症状を認めた.

■ 感作陽性児ではより安全な導入法の検討が必要である.

 

ハイリスクと思われる児に対しては『加熱全卵0.2g』でもやや多い可能性がある。

■ PETIT研究では、加熱全卵0.2g相当の卵パウダーによる導入は安全とされていましたが、すでに卵白感作陽性の生後6か月児に対する2分加熱炒り卵であると アナフィラキシー例はなかったものの23.8%と陽性率は高かったという結果でした。

■ 実際の導入は加熱全卵とはいえゆで卵で開始する場合が多いとおもわれるため、実際の陽性率はもっと低いと思われますが、すくなくとも炒り卵での導入は勧めにくいといえます。

■ そして、生後6か月 のオボムコイド特異的IgE抗体価が1.04U/mL以上であると2分加熱炒り卵加熱全卵 0.2 g摂取で陽性となる可能性が高くなることが示され、論文でも言及されていますが、早期摂取の 開始方法として,はゆで卵黄や固茹で卵白を米1粒大 (約 0.01~0.03g) から開始することが提案されていました。

■ とはいえ、全員にスクリーニング検査を行うかどうかは意見が分かれるでしょう。

■ と考えると、特に過去湿疹があったような児に対して慎重に負荷を行うという視点が必要になると思われます。

■ 個人的には、SNSなどで開始方法を具体的に書くことは避けていますが、というのも具体的に書くほど個別に考えていくべき食物アレルギーの診療にそぐわないように感じているからです。

■ しかし一方で、目安も必要な時期に来ているのかもしれません。

 

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