以下、論文紹介と解説です。

Kang J-M, Jung J, Kim Y-E, Huh K, Hong J, Kim DW, et al. Temporal Correlation Between Kawasaki Disease and Infectious Diseases in South Korea. JAMA Network Open 2022; 5:e2147363-e.

2010年1月から2020年9月までに韓国国民健康保険において川崎病と診断された0歳から19歳の個人を対象に、呼吸器系ウイルスと川崎病の時間的相関を検討した。

重要性

■ 川崎病は、感染症が発症の引き金となることが示唆されているが、その病因は不明である。

■ 最近の報告では、SARS-CoV-2感染とmultisystem inflammatory syndrome in children(MIS-C)のアウトブレイクには4~6週間のタイムラグがあり、KDと類似した症状を呈する小児がいることが報告されている。

 

目的

■ 呼吸器系ウイルスを中心に、KD とウイルス感染症の時間的相関を検討する。

 

試験デザイン、セッティング、参加者

■ 本コホート研究は、2010年1月から2020年9月までに韓国国民健康保険公団からKDと診断された0歳から19歳の個人を対象に実施された。

■ 2016年から2019年の感染症発生に関するデータを、韓国疾病管理庁、韓国インフルエンザ・呼吸器ウイルス監視システム、韓国エンテロウイルス監視システム、韓国の腸管病原体アクティブサーベイランスネットワークから収集した。

■ データの解析期間は2020年12月から2021年10月だった。

 

主なアウトカムと測定方法

■ 全国の感染症データベースを用いて、ウイルス感染症とKDの相関を時系列で分析した。

■ 感染症発生とKD発生との時間的相関は、2つの時系列疾患の相関をタイムラグに基づいて推定するのに有効なツールであるGranger因果検定(G-test)を用いて評価した。

 

結果

■  KD患者53 424人(女性22 510人(42.1%)、男性30 914人(57.9%)、5歳未満44 276人(82.9%))が確認された。

■ γグロブリン静注が無効であるKDは9042人(16.9%)、冠動脈異常は384人(0.7%)に確認された。

■ 解析に含まれる14の感染症のうち、韓国におけるKD発生は、1~3カ月前のライノウイルス感染症のアウトブレイクに、有意な相関が確認された(r=0.3,1カ月:P<0.001,2カ月:P<0.001,3カ月:P<0.001)。

■ 2ヶ月までのKDのアウトブレイクとRSウイルス感染症のアウトブレイクは、有意な相関が確認された(r = 0.5; 2か月; P < 0.001)。

■ さらに、KD発生の2カ月前および3カ月前の水痘のアウトブレイクに、有意な相関が確認された(r = 0.7; 2カ月; P < .001; 3カ月; P < .001)。

論文から引用。

 

結論と関連性

■ 韓国のKDを発症した小児および若年者を対象とした時系列解析による本コホート研究において、KDのアウトブレイク1~3カ月前の呼吸器感染症であるライノウイルスおよびRSウイルス、水痘のアウトブレイクが有意に関連していた。

 

これから、川崎病もふえてくる可能性を考えておく必要性がある。

■ 新型コロナの流行期に、子どもの感染症は大きく減ることとなりました。

■ その時期、日本でも川崎病は、ひととひとの接触がすくない地域を中心に減少したことが報告されています( Hoshino S, Shibata Y, Matsubayashi J, Ae R. Regional Differences in Kawasaki Disease Incidence Reduction Before and After the Onset of the Coronavirus Disease 2019 Pandemic. J Pediatr 2022DOI: 10.1016/j.jpeds.2022.07.008.)。

 

■ もちろん、この結果をもちいて、川崎病が単一の病因で発症しているというわけではありませんが、さまざまな感染症が増加している現在、川崎病もふえてくる可能性があるとかんがえなければならないでしょう。

 

 

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