以下、論文紹介と解説です。
Galant-Swafford J, Zuraw BL, Herschbach J, Mahata M, Mockford EL, Christiansen SC. What is in your pantry? Entomologic anaphylaxis. Allergy Asthma Proc 2020; 41:290-5.
オーツと米を摂取してアナフィラキシーを発症した44歳女性。
背景
■ チャタテムシ(Liposcelis bostrychophila)は、鼻結膜炎や喘息と臨床的に関連する強力な環境アレルゲンである。
■ 穀物製品への侵入が知られているにもかかわらず、この生物の摂取によるアナフィラキシーは、我々の知る限り、これまで報告されていない。
■ そこで、L. bostrychophilaに汚染されたオーツと米を摂取してアナフィラキシーを発症した44歳女性の症例を報告する。
目的
■ 原因不明のアナフィラキシーを呈した症例に関与する L. bostrychophila から、別個の抗原を分離することを目的とした。
方法
■ 摂取した関連物質および吸入アレルゲンのin vitro試験を実施した。
■ 標準抽出物、汚染されたオーツ麦、新鮮なオーツ麦、粉砕したL. bostrychophilaで皮膚プリックテスト(SPT)を実施した。
■ 穀物およびL. bostrychophila抽出物に対する特異的免疫グロブリンE(IgE)を検出するため、被験者および対照血清を用いたウェスタンブロットを実施した。
■ 競合阻害免疫ブロッティングにより、IgE結合の特異性を評価した。
結果
■ In vitro試験およびSPTでは、ダニ、L. bostrychophilaに汚染された小麦粉、汚染されたオーツ麦に対して陽性反応があきらかだった。
■ 新鮮なオーツ麦と米の検査結果は陰性だった。
■ 被験者の血清を用いたイムノブロットでは、汚染されたオーツ麦と米の抽出液に24kDの強い陽性バンドが認められたが、チリダニ抽出液では14kDの単一バンドだった。
■ 単離したL. bostrychophila抽出物でも24kDのバンドが得られた。
■ 競合阻害試験により、汚染されたオーツ麦抽出物中の24kDのバンドは、14kDのチリダニのバンドとは免疫学的に異なることが示唆された。
結論
■ 本症例は、L. bostrychophilaを穀物製品摂取による原因不明のアナフィラキシーの原因として考慮することの重要性をあきらかにした。
■ この昆虫はどこにでも生息していることから、これまで認識されていたよりも一般的な問題であると思われる。
チャタテムシが増加した穀物へのアレルギーに留意を要するかもしれない。
■ 日本ではオーツ麦を貯蔵することはあまりないかもしれませんが、オートミールなどが普及してきているので気をつける必要があるかもしれません。
■ ダニだけでなくチャタテムシにもすこし念頭に置いてもいいかもということです。
■ この論文は、福富先生の総論(Fukutomi Y, Kawakami Y. Respiratory sensitization to insect allergens: Species, components and clinical symptoms. Allergology International 2021; 70:303-12.)を読んでいてみつけました。
■ 福富先生の総論、めちゃくちゃ詳細で勉強になりました。
基本的に医療者向けで、申し訳ありませんが、質問には基本的にお答えしておりません。
所属するいかなる団体の立場も代表するものではありませんし、すべての方に向いているという情報でもありません。予めご了承いただきたく存じます。
しかし、文章やアイデアを盗用・剽窃・不適切な引用したり、許可なくメディア(動画を含む)に寄稿することはご遠慮ください。
クローズドな場での勉強会などに使用していただくことは構いません。