ピーナッツを早期導入しても、ピーナッツアレルギーの発症は減らない?

ピーナッツアレルギーの発症予防に関し、各国のガイドラインが大きく書き換わっている

■ 日本ではピーナッツの早期導入までは踏み込まれていませんが、各国のガイドラインは書き換わってきています。

■ そのなかでの、JAMAに報告された『リアルワールド』の研究結果。

 

Soriano VX, Peters RL, Moreno-Betancur M, Ponsonby AL, Gell G, Odoi A, et al. Association Between Earlier Introduction of Peanut and Prevalence of Peanut Allergy in Infants in Australia. Jama 2022; 328:48-56.

オーストラリアにおける生後12ヶ月の乳児の集団ベースの横断的サンプルを10年おきに2つ収集し、ピーナッツアレルギーの発症率を比較した。

重要性

■ ランダム化比較試験により、早期のピーナッツ導入が一部のハイリスク集団においてピーナッツアレルギーを予防できることが示された。

■ このため、2016年に乳児栄養ガイドラインが変更され、ピーナッツアレルギーのリスクを低減するために、すべての乳児に早期ピーナッツ導入を推奨するようになった。

目的

これらの新しいガイドライン導入後の乳児のピーナッツアレルギーの集団有病率の変化を評価し、早期ピーナッツ導入とピーナッツアレルギーの関連を評価する。

試験デザイン

■ 経時的な変化を比較できるように、同じサンプリング集団と方法を用いて、生後12ヶ月の乳児の集団ベースの横断的サンプルを10年おきに2つリクルートした。

■ 乳児は、オーストラリア、メルボルン周辺の予防接種センターからリクルートした。

■ ピーナッツへの曝露歴やアレルギー歴に関係なく、12ヶ月の予防接種を受けた乳児が参加対象となった(対象年齢11-15ヶ月)。

暴露

■ アンケートにより、人口統計、食物アレルギーの危険因子、ピーナッツの導入、反応に関するデータを収集した。

主要アウトカムと測定法

■ すべての乳児にピーナッツ皮膚プリックテストを実施し、陽性となった乳児には経口食物チャレンジを実施した。

■ 有病率の推定値は、人口統計の経年変化を考慮し標準化した。

結果

■ 本研究には7209人の乳児が含まれた(2018-2019年は1933人、2007-2011年は5276人)。

■ 前のコホートと新しいコホートの参加者では、51.8% vs 50.8%が男児であり、年齢の中央値(IQR)は12.5(12.2-13.0)か月 vs 12.4(12.2-12.9)か月だった。

■ 食物アレルギーの危険因子である東アジア系の起源である乳児が経年的に増加していた(2018-2019年16.5% vs 2007-2011年10.5%)。

■ 乳児の起源およびその他の人口統計学的変化について標準化した後、ピーナッツアレルギー有病率は、2007~2011年の3.1%に対し、2018~2019年は2.6%(95%CI 1.8~3.4%)だった(差 -0.5%[95%CI -1.4~0.4%];P = 0.26)。

■ 2018~2019年のオーストラリア祖先の乳児において、ピーナッツ導入年齢の早さはピーナッツアレルギーのリスク低下と有意に関連していたが(生後6か月以下と比較して生後12か月:調整オッズ比、0.08[05%CI 0.02-0.36]、生後7~10か月未満と比較して生後12か月:調整オッズ比 0.09[95%CI 0.02-0.53])、東アジア起源の乳児では有意ではなかった(相互作用のP = 0.002)。

結論と関連性

■ 横断的分析では、オーストラリアにおけるピーナッツの早期導入を推奨するガイドラインの導入は、集団全体のピーナッツアレルギーの有病率の統計的に有意な低下または上昇とは関連がなかった。

リアルワールドに落とし込んだときに、異なる結果が出ることがある

■ ランダム化比較試験であきらかな結果がでても、リアルワールドでは、さまざまな要因がからみ、はっきりとした結果とならない場合がある好例かもしれません。

■ もちろん、『有効性がない』という意味でもなく、個別に過去の研究結果などとあわせて、考えていく必要性があるでしょう。

 

 

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