脂漏性皮膚炎は皮膚に炎症を起こす病気で、主にマラセチア・グロボーサという真菌が原因です。この真菌は皮脂を分解し、炎症を引き起こします。
■ 脂漏性皮膚炎(Seborrheic Dermatitis: SD)は、2.5%から3%の有病率を持つ皮膚に炎症をおこす疾患です。
■ この疾患は、マラセチアという真菌が関係し、インターロイキン-2などの炎症性サイトカインの増加を特徴とします。
■ マラセチアは、そもそも人間の皮膚に常在、すなわち普通にいる真菌で、実は種類がたくさんありま。
■ そして脂漏性湿疹の原因となる主なマラセチアは、「マラセチア・グロボーサ」と呼ばれる種類になります。この真菌は、皮脂、すなわち皮膚から分泌される油を栄養にして生きています。
■ そしてマラセチア・グロボーサは、皮脂を分解する時に、オレイン酸という物質を作り出します。オレイン酸は、炎症反応を引き起こす物質であり、これが脂漏性湿疹の発症の一因と考えられています。
■要は、脂漏性湿疹はマラセチアという真菌と関係が深く、真菌に対する外用薬が脂漏性湿疹に有効であるということです。
■ しかし一方で、アトピー性皮膚炎の治療に使用される免疫抑制外用薬であるタクロリムス軟膏も、脂漏性湿疹に有効であることが知られています。免疫抑制薬がマラセチアに有効であるということです。
■ そこで、個人的には、マラセチアの多いと言われている箇所、すなわち顔や首、上半身に対するタクロリムス軟膏の有効性は高いと考えています。
■ では、抗真菌薬とタクロリムスのどちらが、より脂漏性湿疹に有効なのでしょうか?
■ タクロリムス0.1%軟膏と抗真菌外用薬シクロピロクスオラミン1%クリームの有効性を比較したランダム化比較試験が、米国皮膚科学会雑誌に公開されています。
※タクロリムス軟膏は、脂漏性湿疹に保険適用はありません。
Joly P, Tejedor I, Tetart F, Cailleux HC, Barrel A, De Preville PA, et al. Tacrolimus 0.1% versus ciclopiroxolamine 1% for maintenance therapy in patients with severe facial seborrheic dermatitis: A multicenter, double-blind, randomized controlled study. Journal of the American Academy of Dermatology 2021; 84(5): 1278-84.
重度で慢性的な顔面脂漏性皮膚炎のある患者114人を対象に、ステロイド外用薬(デソニド0.05%クリーム)を1日2回7日間塗布後、タクロリムス0.1%または抗真菌薬(シクロピロクスオラミン1%クリーム)を週2回24週間使用した。
背景
■ 脂漏性皮膚炎(SD)患者に対する長期維持療法はこれまで検証されていない。
目的
■ 重度の脂漏性皮膚炎に対する維持療法として、タクロリムス0.1%軟膏とシクロピロクスオラミン1%クリームの有効性と耐容性を比較することを目的とした。
方法
■ この二重盲検無作為化対照試験は、2014年から2017年にかけてフランスの5つの皮膚科と15の皮膚科診療所で実施された。
■ 重度で慢性的な顔面SDを有する連続患者が対象となった。
■ 患者は最初にデソニド0.05%クリームを1日2回7日間塗布する治療を受け、その後無作為化されてタクロリムス0.1%またはシクロピロクスオラミン1%クリームを週2回、24週間使用した。
■ 主要評価項目は無病期間であり、これは無作為化から初回再発までの期間として定義された。
結果
■ 114人が無作為化され(タクロリムス群57人、シクロピロクスオラミン群57人)、タクロリムス群では12人が中央値91.5日(範囲15-195日)で再発したのに対し、シクロピロクスオラミン群では23人が中央値27日(範囲13-201日)で再発した。
■ 無病期間曲線の比較では、タクロリムス群の方がシクロピロクスオラミン群よりも寛解期間が長いことが示された(P=0.018)。
■ 再発のハザード比は0.44(95%信頼区間0.22-0.89; P=0.022)だった。
限界
■ 理論上のサンプルサイズには達しなかった。
結論
■ タクロリムス0.1%は、顔面SD患者に対する維持療法としてシクロピロクスオラミン1%よりも有効である。
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