デュピルマブは、重症のアトピー性皮膚炎をおおきく改善する効果があり、小児にも使用できる新しい薬です。しかし、顔や首の症状には効果が見られないことがあります。
■ アトピー性皮膚炎(AD)は、かゆみを伴う慢性の皮膚疾患です。
■ 再発し易い湿疹病変が特徴で、患者の生活の質を著しく損ないます。
■ アトピー性皮膚炎は、すべての皮膚疾患のなかでも負担が大きい疾患なのです。
■ そのようななか、全身投与の薬剤が増えてきて、小児でもデュピルマブ(デュピクセント)が使用できるようになってきました。
■ デュピルマブは、抗インターロイキン(IL)-4受容体α抗体で、主にIL-4、IL-13、両方のサイトカインという情報伝達物質をブロックする生物学的(バイオ)製剤です。
■ 小児に関しても、そして重症であっても、アトピー性皮膚炎の重症度スコアを75%改善させる(ほぼきれいと言っていいと思います)率が約半数という報告があります。個人的には、スキンケアも丁寧に併用することで、もっと効果が高いと思っています。
■ しかしデュピルマブは、体幹や四肢に有効性が高いものの、顔や首には改善が見られないことがあることが知られています。
■ たとえば、Zhuらの報告によると、デュピルマブ療法を受けた73人の患者のうち、14人(19.2%)が顔に新たな湿疹病変を発症したと報告しています 。
Zhu GA, Chen JK, Chiou A, Ko J, Honari G. Assessment of the devel-opment of new regional dermatoses in patients treated for atopicdermatitis with dupilumab. JAMA Dermatol. 2019;155(7):850–2.
■ これらの顔の病変はデュピルマブ治療中にさえ発症し、ステロイド外用薬で十分効果が出ない場合があり、難渋することもあります。
■ 最近、日本からの成人のアトピー性皮膚炎に対する報告で、デュピルマブ治療中にステロイド外用薬に抵抗性のある顔の湿疹病変がある9人に対し、タクロリムス軟膏が有効であったという報告がありました。
Uchida H, Kamata M, Egawa S, Nagata M, Fukaya S, Hayashi K, et al. Effectiveness of tacrolimus ointment on facial lesions refractory to topical corticosteroid in patients with atopic dermatitis receiving dupilumab. Journal of Cutaneous Immunology and Allergy 2022; 5:17-21.
デュピルマブ治療中に顔面病変を発症しステロイド外用薬治療に抵抗性を示した9人の中等度から重度のアトピー性皮膚炎患者を対象に、顔の病変に対してステロイド外用薬からタクロリムス軟膏に切り替えた。
背景
■ デュピルマブは臨床試験において中等度から重度のアトピー性皮膚炎(AD)患者に対して高い有効性と耐えられる安全性を示している。
■ しかし、実際の臨床環境では、体幹や四肢には良好な反応を示す一方で、顔面の赤みを訴える患者もいる。
目的
■ 本研究では、デュピルマブを受けているAD患者において、顔面病変がステロイド外用薬治療に抵抗性を示した場合にタクロリムス軟膏の有効性を調査した。
結果
■ 本研究には、デュピルマブ治療中に顔面病変を発症し、ステロイド外用薬治療に抵抗性を示した中等度から重度のADのある日本人成人患者が含まれた。
■ 9人(女性1名、男性8名)が対象となった。
■ 1人はデュピルマブ開始後に新たに顔面紅斑を発症した。
■ 他の患者は、顔面病変はデュピルマブ治療に対して抵抗性を示した。
■ 9人中5人は、顔面の治療をステロイド外用薬からタクロリムス軟膏に切り替えることで、頭頸部のEASIスコアが改善した。
■ 新たに顔面紅斑を発症した患者も、タクロリムス軟膏の塗布後に改善を示した。
■ デュピルマブ治療中に顔面病変を有する患者において、タクロリムス軟膏の有効性の予測因子を調査したが、タクロリムスに変更後に改善を示した患者と示さなかった患者で、年齢、デュピルマブ治療期間、頭頸部のEASIスコアに有意差は認められなかった。
結論
■ 顔面病変が局所ステロイドに抵抗性を示す場合、タクロリムス軟膏を試みる価値がある。■
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