ステロイド外用薬は抗炎症作用があるものの、皮膚バリア機能を低下させる可能性があり、長期治療に課題があります。
■ アトピー性皮膚炎は、皮膚バリア機能が下がり、皮膚の炎症が悪化していき悪いサイクルに入っていく病気です。
■ 皮膚バリアが破綻し、皮膚の炎症がひどくなると、さまざまなアレルギー疾患のリスクが上がり、たとえば食物アレルギーや気管支喘息の発症リスクが上がります。
■ すなわち、外用治療により皮膚バリア機能を補強し、皮膚の炎症をすくなくする必要性があります。
■ しかし第一選択薬であるステロイド外用薬は抗炎症作用と症状を軽くする効果がありますが、皮膚バリア機能を下げる可能性があります。
■ タクロリムスやピメクロリムスといったカルシニューリン阻害薬、すなわち免疫抑制薬外用薬は、Tリンパ球やランゲルハンス細胞といった細胞の機能を抑制し、炎症を改善させる作用を発揮します。
■ これらは皮膚バリア機能を悪化させずに炎症を改善させます。すなわち、皮膚の菲薄化を引き起こさないため、長期治療に適しています。
■ III群クラスのステロイド外用薬は4週間の使用で、すでに皮膚バリア機能を下げる可能性があるのです。
■ 一方で、現状のタクロリムス軟膏は、2歳以上に対して使用されています。2歳未満に対するタクロリムス軟膏の有効性を示した報告はほとんどありません。
■ そのようななか、1歳以上の乳幼児を対象とした長期比較フォローアップ研究がありました。
※日本の保険診療として、タクロリムス軟膏は2歳以上の適応であり、しかも0.03%のみが使用可能です。0.1%は高校生以上の製剤です。
Mudaliyar VR, Pathak A, Dixit A, Kumar SS. An Open-Label Prospective Study to Compare the Efficacy and Safety of Topical Fluticasone Versus Tacrolimus in the Proactive Treatment of Atopic Dermatitis. Dermatol Pract Concept 2020; 10:e2020094.
ヘルシンキの皮膚アレルギー病院に紹介された1歳から3歳までのアトピー性皮膚炎児152人を対象に、0.03%または0.1%のタクロリムス軟膏群と1%のヒドロコルチゾン酢酸エステル軟膏群にランダム化し、最初の4週間は毎日、次の4週間は週2回塗布した。
背景
■ アトピー性皮膚炎(AD)は、主に小児に発症する慢性かつ再発性の炎症性皮膚疾患である。
■ 外用治療、全身治療、光線療法が治療の主要な手段である。
■ ステロイド(TCS)はADの第一選択の療法であるが、さまざまな副作用がある。
■ そこで、カルシニューリン阻害剤(TCI)外用薬はTCSの代替として使用できる。
目的
■ 本研究の目的は、フルチカゾンとタクロリムスの外用製剤が病気の重症度を軽減する効果を比較、生活の質(QoL)を評価し、病気の重症度とQoLの間に関連があるかどうかを推定することである。
方法
■ ADの小児37人が無作為に2種類の外用治療のいずれかを受け、急性期の最初の4週間は毎日適用し、維持期の次の4週間は週に2回適用した。
■ 病気の重症度はSCORing Atopic Dermatitis(SCORAD)を使用して評価し、QoLはChildren’s Dermatology Life Quality Index(CDLQI)を使用して評価した。
結果
■ 急性期の終了時に、フルチカゾン群ではSCORADスコアが69.29%減少し、タクロリムス群では64.2%減少した(P < 0.001)。
■ 維持期には、フルチカゾン群でスコアが平均0.81上昇し、タクロリムス群では0.99減少した。
■ 両群ともに子どものQoLが改善した(P < 0.001)。
■ SCORADとQoLには正の相関関係(r = 0.4668)が存在した。
■ 最も一般的な皮膚反応は、タクロリムス使用時の皮膚の灼熱感だった。
結論
■ フルチカゾンとタクロリムスはADの治療において同等に有効であり、子どものQoLに対して同様の利益をもたらす。
■ タクロリムスは、病変の範囲を減少させる点でフルチカゾンより優れている。
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