英国における、低アレルゲンミルクの処方の実態は?

英国における、牛乳アレルギーの診断と低アレルゲンミルクの過剰処方の問題。

■ 牛乳アレルギーは、日本の食物アレルギーの頻度として2位であり、問題となっています。

■ 牛乳アレルギーと判明するのは生後4ヶ月から6ヶ月ごろが多いです。

■ そして、低アレルゲンミルクを早期にはじめるほうが良いと個人的には考えています。

■ 最近、低アレルゲンミルク(加水分解乳)を開始すると、12ヵ月後に免疫寛容を獲得する(要は飲めるようになる)率は、高度加水分解乳(+プロバイオティクス)群が約半数が達成する一方、アレルゲン性がないアミノ酸乳群では3%のみであったという報告もあります。

■ 一方で、過剰な指導になりがちであることも考えておく必要性があるでしょう。

■ たとえば、イギリス、アメリカ、ノルウェー、オーストラリアでは、低アレルゲンミルクの処方率が予想以上に高く、牛乳アレルギーの過剰診断が示唆されています。

■ すなわち、必要性のない方への処方は控えることも必要です。
■ その『必要でない人への過剰処方』に関する、最近の報告を共有します。

※低アレルゲンミルクは、乳アレルギーのお子さんにとって極めて重要な栄養源です。過剰な指導が起こり得るという研究結果ですが、自己判断で普通ミルクを飲み始めるのはリスクを伴います。かかりつけ医との相談をご考慮ください。

Allen HI, Wing O, Milkova D, Jackson E, Li K, Bradshaw LE, et al. Prevalence and risk factors for milk allergy overdiagnosis in the BEEP trial cohort. Allergy; n/a.

イングランドで2014年から2016年に生まれた小児1394人を対象に、2歳までに牛乳アレルギー(CMA)の評価を受けた児における、CMAの過剰診断を確認した。

背景

■ 乳児における牛乳アレルギー(CMA)の過剰診断は増加しているように見えるが、その実態はよくわかっていない。
■ そこで、臨床試験集団を用いてCMA過剰診断の特徴付けを行い、個人およびプライマリケア診療におけるリスク要因を特定することを目的に検討した。

方法

■ 2014年から2016年にイングランドで生まれた小児1394人のデータを分析した(BEEP試験、ISRCTN21528841)。

■ 参加者は2歳までに正式なCMA診断を受けた。
■ CMAの過剰診断は、親による牛乳アレルギー反応の報告、プライマリケア記録の牛乳への過敏な症状、プライマリケア記録の低アレルギー性粉ミルクの処方、の3つの方法で定義した。

結果

■ CMAは19人(1.4%)の参加者に正式に診断された。

■ CMAの過剰診断は一般的で、16.1%が親による牛乳過敏症の報告、11.3%がプライマリケアによる牛乳過敏症の記録、8.7%が低アレルゲンミルクの処方をされていた。
■ CMAではない参加者で牛乳過敏症に起因すると考えられる症状は、一般的に胃腸症状であり、報告された年齢の中央値は49日だった。

■ CMAではない乳児に対する低アレルゲンミルク処方は、中央値で10か月間(四分位範囲1、16)続けられ、推定された摂取量は中央値で272リットル(26、448)だった。

■ CMAの過剰診断のリスク要因は、前年に診療所ベースで処方された低アレルゲンミルクの多い処方と、妊娠中の母親による抗生物質処方の報告だった。
■ 生後からの完全ミルク栄養は、低アレルゲンミルクの処方の増加と関連していた。
■ 小児用アドレナリン自己注射器や逆流防止薬の処方、母親の不安、年齢、経産回数、社会経済的地位といった特徴が、CMAの過剰診断と関連しているという証拠は見られなかった。

結論

■ CMA の過剰診断は乳児期早期に多く見られる。
■ リスク要因には、プライマリケアの実践に基づく低アレルゲンミルクの過剰処方や、妊娠中の抗生物質処方の母親による報告などが挙げられる。

 

 

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