夏のアトピー性皮膚炎の洗浄に、洗浄剤は必要か?

アトピー性皮膚炎治療における洗浄剤使用の是非を巡り、夏季の患者を対象に水洗いと洗浄剤洗いの効果を比較する研究が行われました。

■ アトピー性皮膚炎の治療において、スキンケアは重要です。
■ しかし、石鹸や洗剤の使用するかどうかは、意見が分かれています

■ 以前、このテーマに関してネット記事も書きました。

■ 洗浄剤には、細菌やアレルゲンを除去する利点がある一方で、皮膚にマイナスの影響を与える可能性もあるため、意見の相違がでやすいのです。

■ 日本の夏季は湿度が高く汗もかきやすく、皮膚感染症、たとえば膿痂疹(とびひ)のリスクも高まります。
■ そのため、洗浄剤の使用が有効かもしれません。

■ そのような背景のなか、夏季にアトピー性皮膚炎が安定している患者を対象に、水だけの洗浄と洗浄剤を使う洗浄を比較し、どちらが効果的かを調べた研究が公開されていました。

Katoh Y, Natsume O, Yasuoka R, Hayano S, Okada E, Ito Y, et al. Skin care by washing with water is not inferior to washing with a cleanser in children with atopic dermatitis in remission in summer: WASH study. Allergology International 2024.

週2回のステロイド軟膏塗布により湿疹が安定しているアトピー性皮膚炎患者43名を対象に、8±4週間にわたり上下肢の片側を洗浄剤で、もう片側を水のみで洗浄する介入を行った。

背景

■ 水のみで洗うことは、秋冬季の寛解期にある小児アトピー性皮膚炎患者において、洗浄剤で洗うことと比べて劣らないことが示されている。
■ この知見が夏季においても、洗浄剤の種類(石鹸と洗剤)によって異なるかどうかを調査した。

目的

■ 夏季における水洗いが、洗浄剤を用いた洗浄と比較して劣らないかどうかを検証する。

方法

■ この評価者盲検化実用的ランダム化非劣性試験は、週2回のステロイド軟膏塗布により湿疹がコントロールされているアトピー性皮膚炎患者を対象とした。
■ 8±4週間にわたり、参加者は上下肢の片側を洗浄剤で、もう片側を水のみで洗浄した。
■ 各参加者は弱アルカリ性石鹸または酸性洗剤のいずれかを選択した。
■ 主要評価項目は8±4週目のEczema Area and Severity Index (EASI)スコアだった。

結果

■ 登録された47名のうち43名のデータが分析された。
■ 患者の年齢中央値は44(23-99)ヶ月であり、28名が弱アルカリ性洗浄剤を、15名が酸性洗浄剤を選択した。

■ 8±4週目のEASIスコアは、水側が0.00(0.00-0.40)、洗浄剤側が0.15(0.00-0.40)だった(p = 0.74)。

■ 両者の差は0.00(95%信頼区間 -0.07から0.14)であり、事前に設定した非劣性マージンに達しなかった。
■ Patient-Oriented Eczema Measure (POEM)スコアの中央値、追加のステロイド軟膏塗布回数、皮膚感染症の発生において差は認められなかった。
■ 洗浄剤の種類によるいずれの結果の差も認められなかった。

結論

■ 夏季においても、洗浄剤の種類に関わらず、維持期のアトピー性皮膚炎患者において水洗いが洗浄剤での洗浄に劣らないことを実証した。

 

 

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