食物アレルギーの増加に伴い、牛乳アレルギー児への代替飲料の栄養価比較が重要視されてきています。
■ 食物アレルギーは日本でも増えているアレルギー疾患です。つい最近、日本の6歳以下の小児では、この10年で1.7倍に増えているという報告もあります。
■ そのなかでも、牛乳は世界でも多い食物アレルギーです。
■ 牛乳アレルギーは寛解しやすいとはされていましたが、2013年に報告された自然歴を検討した研究では、必ずしもそうともいえないようです。
■ 牛乳や乳製品は、タンパク質、脂肪、オリゴ糖、微量栄養素(カルシウム、リン、リボフラビン、亜鉛、ビタミンB12など)の供給源となり、除去のみでは成長へのリスクが出てきます。
■ そのような背景もあり、牛乳アレルギーのある子どには、加水分解乳(低アレルゲンミルク)や、代替ミルクを考慮することになります。
■ 海外のガイドラインでは、2歳以上の牛乳アレルギー児には、カルシウムを強化した植物性飲料(PBB)(大豆、オーツ麦、アーモンド、ココナッツ、ヘーゼルナッツなどから製造)、5歳以上ではライスミルクも推奨されています。
■ しかし、これら植物性飲料と加水分解乳が同等の栄養があるかどうかは十分なデータがありません。
■ そこで、PBBと加水分解ミルクと栄養を比較した検討が、最近、欧州小児アレルギー免疫学会雑誌(PAI)に報告されていました。
Parlak-Hela Z, Sahiner UM, Sekerel BE, Soyer O. The contribution of milk substitutes to the nutritional status of children with cow's milk allergy. Pediatric Allergy and Immunology 2024; 35:e14202.
トルコのハジェテペ大学小児アレルギー科で、2歳以上のIgE依存性牛乳アレルギー児102名(68.6%が男児、年齢中央値3.7歳)を対象に、2021年1月から7月にかけて3日間の食事記録を含む観察的横断研究を実施した。
背景
■ 牛乳アレルギー(CMA)は食物アレルギーの主要な原因であるが、代替乳製品が栄養状態に与える影響は未解決である。
目的
■ 2歳以上のIgE依存性CMA児における代替乳製品の使用と栄養状態への影響を評価すること。
方法
■ IgE依存性CMA児102名(68.6%が男児、年齢中央値3.7歳、51%が複数食物アレルギー)を対象に横断研究を実施した。
■ 臨床特性、身体計測、食事摂取(3日間食事記録)、栄養状態の生化学的指標を評価した。
結果
■ 44.1%が植物性飲料(PBB)を、19.6%が治療用ミルクを摂取し、36.3%は代替乳製品を摂取していなかった。
■ 全年齢群で、代替乳製品を摂取しない児は、治療用ミルクやPBBを摂取する児よりもカルシウム、リボフラビン、ビタミンDの摂取量が少なかった(p<.01)。
■ 2-3歳群では、治療用ミルク摂取群の亜鉛(p=.011)と鉄(p=.004)の摂取量が多かった。
■ 治療用ミルク摂取群は、PBB摂取群(それぞれp<.001、p=.005)および代替乳製品非摂取群(p<.001)よりも血清25-OHビタミンD(μg/L)とビタミンB12(ng/L)レベルが高かった。
■ 全年齢群で、代替乳製品を使用しない患者は十分な量の食事性カルシウムを摂取できていなかった。
結論
■ 代替乳製品の使用はCMAにおける食事性カルシウム、リボフラビン、ビタミンDの摂取に好影響を与えるが、その寄与は様々である。
■ 代替乳製品を使用しない患者は、食事性カルシウム摂取不足のリスクが高い。
■ 臨床的多様性と個人差の影響を考慮すると、個別化された栄養指導が必要である。
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