頭頸部のアトピー性皮膚炎患者は、マラセチア特異的IgE抗体価が高い

夏季のアトピー性皮膚炎悪化要因である汗中のマラセチアと、頭頸部型アトピー性皮膚炎との関連性とは。

■ 今年も暑い夏ですね。
■ アトピー性皮膚炎にとって、日光や汗は、悪化要因とも改善要因ともとれるのですが、さすがにここまで日光&汗が多くなるような過酷な環境では、悪化要因となりやすいといえるでしょう。

■ 悪化要因の面から汗の中には、マラセチアという真菌アレルゲンが含まれていることがわかっていることなどから、『長く皮膚に止めない』ことを考えることになります。

■ 皮膚常在真菌であるマラセチア属に対し、アトピー性皮膚炎のある患者さんは多くが感作されています。

■ そしてマラセチアは、顔面や頭皮に多いことが知られています。

■ ですので、頭頸部が悪化しているアトピー性皮膚炎のほうがマラセチアに感作されやすいとも考えられます。
■ 逆に言えば、マラセチア特異的IgE抗体が、頭頸部が悪化しているアトピー性皮膚炎を予想するかもしれないという考えも成り立つでしょう。

■ そのような背景のもとに行われた研究があります。

Brodská P, Panzner P, Pizinger K, Schmid‐Grendelmeier P. IgE-Mediated Sensitization to Malassezia in Atopic Dermatitis: More Common in Male Patients and in Head and Neck Type. Dermatitis 2014; 25:120–6.

2011年から2012年にスイスのチューリッヒ大学病院皮膚科で診察を受けた173人のアトピー性皮膚炎患者において、総IgE値とマラセチア特異的IgEを測定し、臨床像、性別、年齢、EASIとの相関を調べた。

背景

■ アトピー性皮膚炎(AD)は一般的な慢性炎症性皮膚疾患である。
■ 皮膚常在真菌であるマラセチアは、特に頭頸部型AD(HNAD)の患者群でADを悪化させると考えられている。

目的

■ 本研究では、ADとマラセチア抗原に対する感作との関係を調査した。

方法

■ 173人のAD患者を評価した。
■ 湿疹の重症度はEczema Area and Severity Index (EASI)で判定し、ADのタイプ、特に頭頸部型についても報告した。
■ 総血清IgEとマラセチア特異的IgEを測定し、ADの臨床像、性別、年齢、EASIとの相関を調べた。

結果

■ 総IgEは77.7%の患者で上昇していた。
■ マラセチア特異的IgEは49.1%の患者で陽性(≥0.35 kU/L)だった。
■ 男性は女性よりも有意に高頻度でマラセチア抗原に感作されていた(男性58% vs 女性42%; P値 0.04)。

■ 同時に、HNAD患者の58%が非HNAD患者の42%に比べてマラセチア特異的IgE抗体価が高く、この差はほぼ有意であった(P値 0.06)。
■ アトピー患者もマラセチアに対してより頻繁に感作されていた。
■ EASIと総IgEまたはマラセチア特異的IgE抗体価に有意な関係は認められなかった。

結論

■ この集団では、IgE感作はAD患者の最大49%に認められ、男性と頭頸部型で最も一般的であった。

 

 

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