乳児期に洗浄剤を使用するかしないかで、アトピー性皮膚炎の発症リスクは変化するか?

皮膚バリア機能低下と入浴習慣の影響が検討されている。そして、日本での乳児期の入浴習慣とアトピー性皮膚炎の発症リスクの関連が検討されました。

■ 皮膚バリア機能障害はアトピー性皮膚炎の発症リスクです。
■ われわれの検討では、生後1週間以内の経皮水分蒸散量により確認された皮膚バリア機能障害が、生後32週までのアトピー性皮膚炎の発症を予測できることを明らかにしています。

■ 皮膚バリア機能は、フィラグリン(FLG)遺伝子変異などの遺伝的要因だけでなく、皮膚刺激物、気候、汚染物質、食事などの環境要因への曝露によっても影響を受けます。

■ そして入浴習慣も、皮膚バリア機能に影響を与える環境要因の1つと考えられています。
■ 最近、英国の生後3ヶ月の乳児1303人において、入浴が頻回になると経皮水分蒸散量が上昇し、ADを発症しやすくなる可能性が指摘されました。
■ しかし、高温多湿の日本でも同様の結果になるのかは不明でした。

■ そのようななか、最近、日本の大規模コホート研究であるエコチル調査から、興味深い研究結果が報告されました。

Kato T, Adachi Y, Tsuchida A, Matsumura K, Murakami S, Shimizu M, et al. Association of soap use when bathing 18‐month‐old infants with the prevalence of allergic diseases at age 3 years: The Japan Environment and Children's Study. Pediatric Allergy and Immunology 2023; 34:e13949.

日本全国15の地域拠点に居住する妊婦を対象とし、74,349人の乳児の18か月時の入浴習慣と3歳時のアレルギー疾患の有病率を調査した。

背景

■ アトピーマーチとは、乳幼児期のアトピー性皮膚炎(AD)から、小児期以降の他のアレルギー性疾患への進行を意味する。
■ 全国規模の出生コホート研究である子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル)調査において、皮膚の状態に影響を与えることが知られている入浴習慣と、乳幼児の後のアレルギー性疾患の発症との関連を調査した。

方法

■ 日本全国15の地域拠点に居住する妊婦を募集した。
■ 1歳6か月の乳児の入浴習慣と、3歳時のアレルギー疾患の有病率に関する情報を入手した。

結果

■ 小児74,349人のデータを解析した。
■ 1歳6か月の乳児の大半は、ほぼ毎日入浴またはシャワーを浴びていた。

■ 入浴時の石鹸の使用頻度(毎回、ほとんど毎回、時々、ほとんど使わない)に応じて4つのグループに分けると、3歳時のADリスクは、石鹸の使用頻度が減少するにつれて高まることが示された[ほとんど毎回:調整オッズ比(aOR)1.18、95%信頼区間(CI) 1.05–1.34;時々:aOR 1.72、95% CI 1.46–2.03;ほとんどしない:aOR 1.99、95% CI 1.58–2.50]。
■ 同様の結果は食物アレルギーでも得られたが、気管支喘息では得られなかった。

結論

■ 生後18か月の乳児が頻繁に石鹸を使って入浴すると、3歳までにアレルギー疾患を発症するリスクが低下することが明らかになった。
■ アレルギー疾患の発症を防ぐ効果的な入浴方法を決定するには、さらに綿密に計画された臨床研究が必要である。

 

 

※論文の背景や内容の深掘り、個人的な感想は、noteメンバーシップにまとめました。

※登録無料のニュースレター(メールマガジン)も始めています。さまざまなテーマを深堀り解説しています。ご興味がございましたらリンクからご登録ください。

 

このブログは、私の普段の勉強の備忘録やメモを記録しているものですので、細かい誤字脱字はご容赦ください。
基本的に医療者向けで、申し訳ありませんが、質問には基本的にお答えしておりません。

知識の共有を目的に公開しておりますが、追加して述べる管理人の意見はあくまでも個人としての私見です。
所属するいかなる団体の立場も代表するものではありませんし、すべての方に向いているという情報でもありません。予めご了承いただきたく存じます。

このブログの『リンク』は構いません。
しかし、文章やアイデアを盗用・剽窃・不適切な引用したり、許可なくメディア(動画を含む)に寄稿することはご遠慮ください。
クローズドな場での勉強会などに使用していただくことは構いません。
Instagram:2ヶ月で10000フォロワーを超えました!!!

Xでフォローしよう