A群連鎖球菌(溶連菌)による重篤な感染症(侵襲性感染症)の増加を受け、早期の抗生物質治療の有効性が検討されました。
■ A群連鎖球菌(GAS)は、さまざまな病気を引き起こす細菌です。
■ 例えば扁桃咽頭炎、猩紅熱、膿痂疹(とびひ)が一般的でしょう。
■ しかしまれに、敗血症、髄膜炎、壊死性筋膜炎などの命に関わる状態に至るという侵襲性の感染を引き起こすことがあります。
■ そして侵襲性A群レンサ球菌感染症(iGAS)といい、特に重症になった場合は劇症型A群レンサ球菌感染症といいます。
■ これら抗菌薬治療や時に外科的処置が早期に必要となります。
■ 2022年から2023年から欧州の小児を中心に、侵襲性A群レンサ球菌(iGAS)感染症の増加が観察されました。
■ 具体的には、ドイツとスイス、オランダ、イギリスなどです。
■ そして、A群レンサ球菌感染症の疑いのある場合は抗生物質で治療するよう推奨されましたが、ドイツとスイスのガイドラインは変更されませんでした。
■ 要は、A群レンサ球菌感染症が疑われた場合に、侵襲性になる前の治療が有効であったかを検討したことになります。
※この論文は、ニュースレター(登録無料です)でも引用いたしました。
Erlacher R, Toepfner N, Dressen S, Berner R, Bösch A, Tenenbaum T, et al. Are Invasive Group A Streptococcal Infections Preventable by Antibiotic Therapy?: A Collaborative Retrospective Study. The Pediatric Infectious Disease Journal 2024:10.1097.
2022年9月から2023年3月にドイツとスイスの3つの小児医療機関で侵襲性溶連菌感染症患により入院した63人の18歳未満の患者を対象に、医療カルテと電話インタビューによる後ろ向きの多施設研究を実施した。
背景
■ 2022/2023年の冬、ドイツやスイスを含むヨーロッパで、小児における侵襲性A群連鎖球菌(iGAS)感染症の再燃が観察された。
■ イングランドでは、猩紅熱や咽頭炎の受診が同時に増加し、疑わしいGAS疾患には全て抗生物質で治療するよう推奨されたが、ドイツとスイスのガイドラインは変更されなかった。
■ この方針が適切であったかを調査することを目的とした。
方法
■ 2022年9月から2023年3月に、ドレスデンとベルリン(ドイツ)とバーゼル(スイス)の小児科部門で侵襲性GAS疾患で入院した小児を対象に、後ろ向き多施設研究を実施した。
■ 医療記録を検討し、構造化された電話インタビューを行い、入院前に疑われたGAS感染症に対する抗生物質治療の有無を分析した。
結果
■ 計63人の患者が包含基準を満たした(年齢中央値4.2歳、男性57%)。
■ ただし、全ての分析特性に関して臨床情報が完全ではなかった。
■ 54人中32人(59%)が入院前4週間以内に1回以上の医師の診察を受けていた。
■ 32人中4人(13%)で扁桃炎や猩紅熱などのGAS疾患が疑われ、そのうち2人が抗生物質を投与された。
■ 1人でGASの迅速抗原検査陽性が記録されていた。
結論
■ iGAS疾患の4週間前にGAS感染症を疑われていたのは少数だった。
■ これらのデータは、抗生物質療法によりiGAS疾患を予防する機会が限られていることを示唆している。
■ なぜなら、ほとんどの患者は医師の診察を受けてもGAS疾患のエビデンスがないか、GAS疾患が疑われ抗生物質で治療されても、その後の侵襲性GAS疾患を防ぐことができなかったからである。
※論文の背景や内容の深掘り、個人的な感想は、noteメンバーシップにまとめました。
※登録無料のニュースレター(メールマガジン)も始めています。さまざまなテーマを深堀り解説しています。ご興味がございましたらリンクからご登録ください。
基本的に医療者向けで、申し訳ありませんが、質問には基本的にお答えしておりません。
所属するいかなる団体の立場も代表するものではありませんし、すべての方に向いているという情報でもありません。予めご了承いただきたく存じます。
しかし、文章やアイデアを盗用・剽窃・不適切な引用したり、許可なくメディア(動画を含む)に寄稿することはご遠慮ください。
クローズドな場での勉強会などに使用していただくことは構いません。