鼻スプレータイプのエピネフリン(アドレナリン)は、筋肉注射のエピネフリンと薬物動態に差があるか?

アナフィラキシー治療用の鼻スプレー型エピネフリン(アドレナリン)「neffy」が開発され、良好な治験結果から日本での臨床使用の可能性が高まっています。

■ 重症のアレルギー反応(アナフィラキシー)に対しての第一選択の治療は、エピネフリン(アドレナリン)の筋肉注射になります。

■ 医療機関の外では、自己注射薬が使われていますが、注射への抵抗感から使用が遅れることがあります。
■ そこで、鼻にスプレーするタイプの新薬が開発されています。
■ 6歳から17歳の子ども15人を対象の治験で、結果が良好であったという報道がありました。

■ 実は、鼻スプレー以外の投与ルートとして、舌下や吸入などが検討されています。
■ この鼻スプレーエピネフリン(アドレナリン)は、商品名『neffy(ARS Pharmaceuticals, Inc, San Diego, Calif)』という製品です。

■ このneffyは、今後、日本の臨床現場でも使用されるようになる可能性があります。
■ 最近の研究結果を確認してみました。

Casale TB, Ellis AK, Nowak-Wegrzyn A, Kaliner M, Lowenthal R, Tanimoto S. Pharmacokinetics/pharmacodynamics of epinephrine after single and repeat administration of neffy, EpiPen, and manual intramuscular injection. Journal of Allergy and Clinical Immunology 2023; 152:1587-96.

59人の健康被験者を対象に、鼻スプレーアドレナリン(エピネフリン)neffy 2.0 mg、EpiPen 0.3 mg、用手的筋肉内注射 0.3 mgの3種類の投与方法を用いて、単回投与と反復投与の2パートからなるクロスオーバー試験を実施した。

背景

■ エピネフリンは重度のアレルギー反応に対する第一選択薬であり、迅速な投与は入院率と死亡率の低下と関連している。
■ 現在の治療選択肢(エピネフリン自己注射器および用手的筋肉内注射)は扱いにくいと考えられており、ほとんどの患者/保護者は重度の反応時でさえも使用を躊躇する。
■ 患者/介護者に追加の選択肢を提供するために、鼻腔内エピネフリン投与デバイスであるneffyが設計された。

目的

■ neffy 2.0 mg、EpiPen 0.3 mg、用手的筋肉内注射 0.3 mgの比較薬物動態学および薬力学を評価することを目的とした。
■ これは、59人の健康被験者を対象とした第1相、無作為化、6処置、6期間、2パートのクロスオーバー試験だった。
■ 単回投与および反復投与後のエピネフリンの薬物動態学的および薬力学的パラメータを、投与前・投与後の様々な間隔で評価した。

結果

■ neffyの薬物動態プロファイルは承認された注射製剤の範囲内であり、平均最高血漿中濃度は481 pg/mLで、EpiPen(753 pg/mL)とエピネフリン用手的筋肉内注射(339 pg/mL)の中間だった。

■ 1回および2回投与時のいずれも、neffyはEpiPenまたは用手的注射と比較して、薬力学的パラメータのより顕著な増加をもたらした。

結論

 neffyの薬物動態プロファイルは承認された注射製剤の範囲内であり、薬力学的反応は承認された注射製剤と同等またはそれ以上であった。
■ neffyは、特に注射デバイスの携帯と使用を躊躇する患者/保護者にとって、安全で効果的な選択肢になると期待される。

 

 

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