ペニシリンを含むβラクタム系抗菌薬アレルギーの正確な診断と適切な使用が課題となっている。
■ βラクタム系抗菌薬は、細菌の細胞壁の形成を阻害することで、細菌の増殖を抑え、感染症の治療をするタイプの薬です。
■ そしてβラクタム系抗菌薬は、ペニシリンやセファロスポリンなど、様々な種類があり、ひろく活用されています。
■ βラクタム系抗菌薬アレルギーは、小児で最も多い薬物アレルギーのひとつで、約5%〜10%の小児あるとも報告されています。
■ しかし、『抗菌薬アレルギーあり』とレッテルを貼ってしまうと、使うことのできる抗菌薬の幅が狭まり、不適切な抗菌薬の使用が増加し、耐性菌が増えてくると治療の成功率を下げることになります。
■ 一方で、たとえばペニシリンアレルギーの疑いがあっても、最大90%が再度内服しても症状がないことが示されています。
■ すなわち、多くのβラクタム系抗菌薬アレルギーは、そもそも皮膚症状などのでやすい感染症のある状況で判断されているため、皮疹が抗生物質によるものと誤って認識されることがありうるということです。
■ とはいえ、βラクタム系アレルギーかもしれない、という児に対し抗菌薬を再度内服させるというのは当然リスクがあります。
■ そこで、そのリスク因子を承知しておく必要性があるでしょう。
■ そこで、このテーマの研究はさまざま行われていますが、わかりやすいリスク因子を求めた研究が、最近報告されています。
Wilkins AL, Pittet LF, Kyriakou S, Walker K, Donath S, Choo S, et al. Allergy to beta-lactam antibiotics in children: predictors for a positive oral challenge test. Arch Dis Child 2024.
メルボルンのロイヤルチルドレンズ病院で、0〜19歳の小児1259名を対象に、院内での段階的負荷試験に引き続き5日間の外来抗生物質投与からなる、βラクタム系抗生物質の経口負荷試験(OCT)を実施した。
背景
■ ベータラクタム系抗生物質アレルギーは、小児の5%〜10%で報告されているが、経口負荷試験(OCT)で最大90%が反応を示さない。
目的
■ 本研究は、ベータラクタム系抗生物質アレルギーの診断(Antibiotic Allergy Label; AAL)のある小児において、段階的な院内経口負荷試験(Oral Challenge Test ; OCT)の陽性率を決定し、陽性OCTの予測因子を特定することを目的とした。
方法
■ これは7年間にわたって実施された後ろ向き研究で、0〜19歳の小児でベータラクタム系OCTを受けた者を対象とした。
■ OCTは、院内での段階的負荷試験に続いて5日間の外来抗生物質投与コースで構成された。
■ 院内段階的OCTの陽性予測因子を特定するために、単変量および多変量ロジスティック回帰分析を実施した。
結果
■ 計1259件のベータラクタム系OCTが含まれ、OCT時の年齢の中央値は6.3歳(範囲8.8ヶ月〜19.2歳)だった。
■ このうち、18件(1.4%)の院内段階的OCTが陽性で、10件(0.8%)が判定保留であり、院内段階的OCTで即時かつ重度の反応を示したのはわずか4人(0.3%)の小児だった。
■ 単変量解析で院内段階的OCTの陽性と関連する因子は、他の薬物アレルギーの既往(OR 2.7、95%CI 1.0〜7.2; p=0.05)、重度の初回反応(OR 2.9、95%CI 1.1〜7.6; p=0.035)、即時かつ重度の初回反応(OR 5.85、95%CI 1.7〜20.0; p=0.005)、エピネフリンを必要とした初回反応(OR 9.65、95%CI 1.7〜53.6; p=0.01)だった。
結論
■ ベータラクタム系AALで紹介された小児のうち、わずか1.4%が院内段階的OCTで陽性だった。
■ 院内段階的OCT陽性の危険因子は、他の薬物アレルギーの既往、重度の初回反応、即時かつ重度の初回反応、エピネフリンを必要とした初回反応だった。
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