アトピー性皮膚炎の重症度は、子どもと保護者のQOLに大きな影響を与える。
■ アトピー性皮膚炎は、一般的な慢性炎症性皮膚疾患の一つで、主な問題は、なかなか治らない痒みと見た目の変化でしょう。
■ そして、子どものアトピー性皮膚炎は、睡眠障害、イライラ、不安、自尊心低下、心理的な問題を抱える可能性を高めます。
■ アトピー性皮膚炎が生活の質を低くすることは、先行研究でも調査されていますが、サンプルサイズが小さいため、さらなる調査を必要としていました。
■ 最近、有病率の高い地域(シンガポール)で、アトピー性皮膚炎が健康関連生活の質(HRQOL)に与える影響を調べ、関連する要因を評価した研究がありましたので共有します。
Xu X, van Galen LS, Koh MJA, Bajpai RC, Thng STG, Yew YW, et al. Factors influencing quality of life in children with atopic dermatitis and their caregivers: a cross-sectional study. Scientific Reports 2019; 9.
シンガポールの2つの小児皮膚科クリニックで、559人のアトピー性皮膚炎の小児患者(<16歳)とその保護者を対象に、RAND-36、IDQOL、CDLQIの3つの調査票を用いた横断的調査を実施した。
背景
■ アトピー性皮膚炎が生活の質に与える影響をより良く理解することで、現在の管理と治療戦略を向上させることができる。
■ アトピー性皮膚炎の小児患者とその保護者の健康関連QOLに関連する因子を調査した研究は限られている。
目的
■ アトピー性皮膚炎が小児患者とその保護者の生活の質に与える影響を評価し、関連する因子を明らかにすること。
結果
■ この横断研究には、559人のアトピー性皮膚炎の小児患者(<16歳)とその保護者が含まれた。
■ 疾患重症度は乳児のHRQOLと関連していた(中等度: IRR: 1.42, 95% CI 1.20–1.67; 重度: IRR: 1.72, 95% CI 1.32–2.24)。
■ 年齢と疾患重症度は小児のHRQOLと関連していた(年齢: IRR: 0.99, 95% CI 0.98–1.00; 中等度: IRR: 1.08, 95% CI 1.02–1.14)。
■ 生活の質に関するサブドメインのうち、瘙痒/引っ掻き、情緒的苦痛、睡眠障害が最も多く報告され、疾患重症度が高いほど増加した。
■ 保護者の精神的健康と身体的健康の両方が、子どものHRQOLによって負の影響を受けた(身体的: IRR: 0.99, 95% CI 0.99–1.00; 精神的: IRR: 0.98, 95% CI 0.97–0.99)。
■ 社会人口統計学的特性(性別、民族、保護者の教育達成度、子どもの数)は、小児のHRQOLモデルにおいて有意性を示さなかった。
結論
■ 現在のアトピー性皮膚炎の診断と治療は、小児患者とその保護者の両方の生活の質に影響を与える因子にまで拡大し、それに応じて管理を適応させる必要がある。
■ 瘙痒/引っ掻き、情緒的苦痛、睡眠障害には注意を払う必要がある。
■ 小児のHRQOLモデルにおける社会人口統計学的特性についても、さらなる研究で注目に値する。
この論文でわかったことをざっくりまとめると?
シンガポールの2つの小児皮膚科クリニックで、559人のアトピー性皮膚炎の小児患者(<16歳)とその保護者を対象に、RAND-36、IDQOL、CDLQIの3つの調査票を用いた横断的調査を実施した。
✅️疾患重症度は乳児のHRQOLと関連しており、中等度で IRR: 1.42 (95% CI 1.20–1.67)、重度で IRR: 1.72 (95% CI 1.32–2.24) であった。
✅️生活の質に関する項目のうち、瘙痒/引っ掻き、情緒的苦痛、睡眠障害が最も多く報告され、疾患重症度が高いほど増加した。
1) RAND-36(36-Item Short Form Health Survey): 健康関連QOLを測定する広く使用されている調査票で、シンガポールの人口に対して妥当性が確認されています。
2) 乳児皮膚炎QOL指標(IDQOL)(Infants' Dermatitis Quality of Life Index): 4歳未満の子どものQOLを測定します。中国では妥当性が確認されています。
3) 小児皮膚科QOL指標(CDLQI) (Children's Dermatology Life Quality Index): 4~16歳の子どものQOLを測定する広く使用されている調査票です。
※論文の背景や内容の深掘り、個人的な感想は、noteメンバーシップにまとめました。
※登録無料のニュースレター(メールマガジン)も始めています。さまざまなテーマを深堀り解説しています。ご興味がございましたらリンクからご登録ください。
基本的に医療者向けで、申し訳ありませんが、質問には基本的にお答えしておりません。
所属するいかなる団体の立場も代表するものではありませんし、すべての方に向いているという情報でもありません。予めご了承いただきたく存じます。
しかし、文章やアイデアを盗用・剽窃・不適切な引用したり、許可なくメディア(動画を含む)に寄稿することはご遠慮ください。
クローズドな場での勉強会などに使用していただくことは構いません。