アトピー性皮膚炎治療における保湿剤に、あたらしくエモリエントプラスの概念が提案されている。
■ アトピー性皮膚炎(AD)は、かゆみを伴い、長く続く長期的な皮膚の炎症疾患です。
■ アトピー性皮膚炎の基本的な治療方法は、アレルギーの原因となるものを避けることと、毎日保湿剤を使うことです。
■ しかし、保湿剤だけでは症状を抑えられないことも少なからずあります。
■ そのようなときによく使用されるのがステロイド外用薬です。
■ ステロイド外用薬は、かゆみや炎症を抑える効果がありますが、長期間使うと肌が薄くなったり、血管が目立つようになったりする(血管拡張)副作用があります。
■ 最近、普通の保湿剤よりも効果が高い「エモリエントプラス」という新しいタイプの保湿剤が注目されています。
■ エモリエントプラスは、軽いアトピー性皮膚炎の人が使うと、短期間でも長期間でも効果があるようです。
■ そして最近、ステロイド薬を減らせる可能性もあるという報告がなされていました。
Zelenkova H, Kerob D, Salah S, Demessant‐Flavigny AL. Impact of daily use of emollient ‘plus’ on corticosteroid consumption in patients with atopic dermatitis: an open, randomized controlled study. Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology 2023; 37:27-34.
軽度から中等度のアトピー性皮膚炎(AD)患者119名(平均年齢26.50 ± 17.5歳)を対象に、28日間エモリエント「プラス」を1日2回塗布する群と通常のエモリエントを継続する対照群に1:1でランダム化した。
背景
■ エモリエントは、表皮バリアを改善し、抗刺激作用と抗掻痒作用を発揮するために、軽度または中等度のアトピー性皮膚炎(AD)の基本的な治療法である。
■ エモリエント「プラス」はアトピー性皮膚炎患者の皮膚微生物叢に影響を与える可能性がある。
目的
■ エモリエント「プラス」を使用してステロイド外用薬使用料を減少させる利点を評価する。
方法
■ オープン、単施設、無作為化、対照試験において、軽度から中等度のAD患者(SCORAD スコア20–30)を1:1の割合で、28日間1日2回エモリエント「プラス」を塗布する群と、通常の古典的エモリエントを継続する対照群にランダム化した。
■ さらに、各患者は必要に応じて、皮膚科医の処方に従って使用する外用ステロイドを受け取った。
■ 評価項目にはSCORAD、PO-SCORAD、局所SCORAD、生活の質に関する質問票、忍容性が含まれた。
結果
■ Per Protocol(治験実施計画書に適合した対象集団)群には119人の患者が含まれ、平均年齢は26.50 ± 17.5歳(最小-最大3-71歳)であった。
■ ベースラインと28日目で、使用されたステロイドの平均量はエモリエント「プラス」群の方が対照群よりも少なかった(6.03 vs 9.16 g; p = 0.041)。
■ また、ステロイドを塗布した日数も少なく(37.5% vs 46.9% の日数; p = 0.0256)、1日あたりの塗布回数も少なかった(0.55 vs 0.71 回/日; p = 0.0203)。
■ SCORAD、PO-SCORAD、Local-SCORAD、皮膚感覚スコア、AD負担尺度、患者利益指数>1、被験者と研究者の有効性と忍容性に関する質問票評価において、両群で同様の改善が観察された。
結論
■ ベースラインと28日目で、エモリエント「プラス」群は対照群と比較して、量、1日あたりの塗布回数、使用日数において有意なステロイドの低減効果があった。
■ 一方で、すべての臨床評価や忍容性において両群間に有意差がなく、有効性は維持された。
論文のまとめ
✅ベースラインと28日目で、使用されたステロイドの平均量はエモリエント「プラス」群の方が対照群よりも少なかった(6.03 vs 9.16 g; p = 0.041)。
【簡単な解説】エモリエント「プラス」を使った人たちが、普通の保湿剤を使った人たちよりも炎症を抑える薬(ステロイド)の使用量が少なくて済みました。具体的には、エモリエント「プラス」群が6.03g、対照群が9.16gのステロイドを使いました。
✅SCORAD、PO-SCORAD、Local-SCORAD、皮膚感覚スコア、AD負担尺度、患者利益指数>1、被験者と研究者の有効性と忍容性に関する質問票評価において、両群で同様の改善が観察された。
【簡単な解説】症状の改善度合いや患者さんの生活の質、薬の副作用などを評価する様々な指標において、エモリエント「プラス」群と対照群で同じくらいの改善が見られました。つまり、ステロイドの使用量は減らせたのに、効果は同じくらいあったということです。
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