アトピー性皮膚炎の新たな保湿剤の概念、エモリエントプラスの長期使用効果と安全性を検証した報告。
■ アトピー性皮膚炎(AD)は、皮膚のバリア機能が低下したり、皮膚に常在する微生物のバランスが崩れたりします。
■ 最近の研究では、皮膚の微生物のバランスを整える成分を含んだ、『エモリエントプラス』の報告があります。
■ 最近、ステロイド外用薬を減らす効果も報告されています。
■ そのうえで、エモリエントプラスを使う場合に、長期間の安全性に関して懸念がありました。
■ そこで、エモリエントプラスを168日間使ってもらい、症状がどう変化するかを観察した研究が報告されています。
Cestari SCP, Correia P, Kerob D. Emollients “Plus” are Beneficial in Both the Short and Long Term in Mild Atopic Dermatitis. Clinical, Cosmetic and Investigational Dermatology 2023; 16:2093 - 102.
3歳以上の軽症アトピー性皮膚炎患者56名(平均年齢25.0±20.0歳、45%が小児)に対し、エモリエントプラスを1日1回以上168日間使用した。
背景
■ アトピー性皮膚炎(AD)は、皮膚バリア障害、微生物叢の不均衡、炎症を含む病態生理を持つ慢性再発性疾患である。
■ 従来、健康な微生物叢を維持するエモリエントが、ADの重症度に関わらず管理の基本として推奨されている。
目的
■ ビタミンE、トコフェロール、グリセリンを含み、Aqua posae filiformisとmicroresylで強化されたライトバーム(エモリエントプラス)の有効性を、軽症AD患者において168日間にわたり評価することである。
■ この非盲検試験では、少なくとも6ヶ月前に診断された軽度で安定したADを持つ3歳以上の被験者で、SCORAD値が25未満の者が対象となった。
■ 評価はベースライン、14日目、28日目、84日目、168日目に行われ、SCORAD、紅斑頻度、臨床症状と徴候の重症度、コルネオメーターによる皮膚の水分量、忍容性が含まれた。
■ QoLはDLQIもしくはCDLQI質問票を用いて評価された。
■ 被験者は1日1回以上エモリエントプラスを使用した。
結果
■ 計56名の被験者がこの研究に参加した。
■ 平均年齢は25.0±20.0歳(45%が小児)で、69.6%が女性だった。
■ 小児集団を除く紅斑において、すべての臨床パラメータが28日目に有意に改善した(すべてp < 0.05)。
■ 168日目には、SCORAD、徴候と症状がベースラインと比較して全体、成人、小児集団で有意に改善した(すべてp < 0.05)。
■ 紅斑、皮膚水分量、QoLも同様だった。
■ この処方の忍容性は高かった。
結論
■ エモリエントプラスは軽度のADにおいて高い有効性を示し、忍容性が良好で、AD徴候と症状および皮膚水分の改善、被験者のQoL向上において28日目という早期から効果が見られた。
論文のまとめ
✅️SCORADスコアは、使用開始後14日目から全ての集団で有意な改善が見られ、168日目まで継続的に症状が改善した(p < 0.001)。
【簡単な解説】 エモリエントプラスを使い始めてから2週間後には、アトピー性皮膚炎の症状を表すSCORADという指標が、大人も子供も含めて良くなり始めました。そして、この改善は約5ヶ月半の間ずっと続きました。
✅️生活の質(QoL)は、成人と小児の両集団とも、使用開始後14日目から有意な改善が見られ、成人では168日目に89.8%、小児では84.2%の改善が確認された(p < 0.001)。
【簡単な解説】 エモリエントプラスを使うことで、患者さんの生活の質(QoL)も良くなりました。大人も子どもも、使い始めて2週間後から生活が楽になり始め、約5ヶ月半後には大人で約90%、子供で約84%も良くなりました。この結果も統計的に意味のある改善でした。
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