生物学的製剤を使用中に、抗薬物抗体はどれくらいの頻度で発生するのか?

アレルギー治療の進歩により、喘息やアトピー性皮膚炎向けの新薬「生物学的製剤」が登場したが、抗薬物抗体(ADA)の発生が注目されています。

■ アレルギーの治療法は、大きく進歩してきています。
■ たとえば重症の喘息患者やアトピー性皮膚炎に向けた「生物学的製剤」がさまざま上梓されています。

■ たとえば、喘息に対してはオマリズマブ、メポリズマブ、レスリズマブ、ベンラリズマブ、デュピルマブ、テゼペルマブがあります。

■ これらの薬は、比較的安全であることが分かっています。
■ しかし、使用が増えるにつれて、薬の効果や安全性を比較する必要が出てきています。

■ そのなかでも、生物学的製剤には、一つ問題があります。
■ それは、体が薬に対して抗体を作ってしまうことです。

■ この抗体を「抗薬物抗体」(Anti-Drug Antibodies; ADA)と呼びます。
■ ADAができると、薬の効果が弱くなったり、副作用が増えたりする可能性があります。

■ 例えば、関節リウマチの治療薬完全ヒト型TNF阻害薬アダリムマブは、31%の患者でADAができるというデータもあります。

■ しかし、喘息の治療に使われる生物学的製剤について、ADAがどのくらいできるのか、まだよく分かっていません。
■ 最近、これまでの研究結果をまとめて分析し、ADAがどのくらいの頻度で発生するのかが調査されました。

Chen M-L, Nopsopon T, Akenroye AT. Incidence of Anti-Drug Antibodies to Monoclonal Antibodies in Asthma: A Systematic Review and Meta-Analysis. The journal of allergy and clinical immunology. In practice 2023.

中等度から重度の喘息患者を対象とし、46研究(計12,379人の参加者)において、6種類の生物学的製剤(ベンラリズマブ、デュピルマブ、メポリズマブ、オマリズマブ、レスリズマブ、テゼペルマブ)の投与を行い、中央値40週間(四分位範囲24-56週)追跡した。

背景

■ 抗薬物抗体(ADA)はバイオ医薬品の有効性と安全性を悪化させる可能性がある。
■ しかし、米国で喘息治療に承認されている6種類のバイオ医薬品に関連するADAの発生率については、ほとんど知られていない。

目的

■ ADAの発生率とそれが報告された臨床転帰に与える影響を解明すること。

方法

■ 2000年1月1日から2022年7月9日までの期間にPubMed、Embase、CENTRALにインデックスされた、喘息患者における生物学的製剤のランダム化比較試験、オープンラベル延長試験、非ランダム化試験の系統的レビューとメタ解析を実施した。
■ 主要評価項目は治療中に発現したADA(発生率)とADA有病率であった。

結果

■ 計46件の研究が適格基準を満たした。

■ フォローアップ期間中のADA発生率は2.91%(95%CI、1.60-4.55)であり、ベンラリズマブ試験で最も高く(8.35%)、プラセボと比較したリスク比は4.9(2.69-8.92)であり、オマリズマブ試験で最も低かった(0.00%)。

■ 発生率はデュピルマブの試験では7.61%、レスリズマブで4.39%、メポリズマブで3.63%、テゼペルマブで1.12%だった。

■ 中和抗体の発生率は0.00%から10.74%で、ベンラリズマブで最も高かった(7.12%)。
■ ベンラリズマブの8週間隔投与群(8.17%)は4週間隔投与群(5.81%)と比較して中和抗体の発生率が高かった。
■ 結果は試験タイプとフォローアップ期間による部分集団解析でも一貫していた。

結論

■ 包含された試験において、約2.9%の被験者が試験フォローアップ期間中にADAを発現した。
■ 発生率はベンラリズマブ群で最も高く、オマリズマブ群で最も低かった。
■ 皮下投与経路とより長い投与間隔は、より高いADA発現と関連していた。

 

 

論文のまとめ

✅️全生物学的製剤群での抗薬物抗体(TE-ADA)の発生率は2.91%(95%信頼区間:1.60-4.55%)であり、ベンラリズマブ群で最も高く(8.35%)、オマリズマブ群で最も低かった(0.00%)。
【簡単な解説】 薬に対して体が反応して抗体を作ることがあり、全体では約3%の患者さんでそれが起こりました。ベンラリズマブで最も多く(約8%)、オマリズマブでは全く見られませんでした。
✅️皮下投与経路とより長い投与間隔は、より高い抗薬物抗体(ADA)発現と関連していた。
【簡単な解説】 薬を皮膚の下に注射する方法で投与する薬や、薬を打つ間隔が長いほど、抗体を作りやすくなることがわかりました。これは、薬の使い方によって、薬の効果が変わる可能性があることを示しています。

 

 

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