妊娠中の母親の食事と乳児期の食事は、子どものアレルギーのリスクに影響するか?
■ 妊娠中のお母さんの食事が、生まれてくる赤ちゃんのアレルギーリスクに影響を与える可能性があることが指摘されています。
■ 例えば、妊娠中にビタミンDをしっかり摂ると、子どもの喘息リスクが下がる可能性などが示されています。
■ また、妊娠中のお母さんの食事のバランスが良いほど、子どもがアレルギー性鼻炎や湿疹、喘息になるリスクが約20%低くなるという報告もあります。
■ さらに、赤ちゃんの食事の多様性が重要であることも、食物アレルギーになりにくい傾向があることが示されています。
■ では、お母さんの食事と赤ちゃんの食事が、それぞれどのようにアレルギー疾患のリスクに影響しているのでしょうか。
■ 最近の研究結果を共有します。
※この研究は、『お母さんが』『お子さんが』、食事に気をつけなかったために子どもさんがアレルギーになったということを示すための研究ではありません。今後の食事に対する情報を積み上げるための研究です。
※この論文はオープンアクセスではないので、図などは示していません。
Venter C, Pickett-Nairne K, Leung D, Fleischer D, O'Mahony L, Glueck DH, et al. Maternal allergy-preventive diet index, offspring infant diet diversity, and childhood allergic diseases. Allergy; n/a.
Healthy Start研究に参加した967組の母子ペアを対象に、妊娠中と乳児期の食事内容を自己申告により評価し、子どものアレルギー疾患の発症との関連を調査した。
背景
■ 小児期の食事の多様性とアレルギー疾患に関する研究では、妊娠中の母親のアレルギー予防関連食事指数との追加的な関連を検討していない。
■ そこで、出生前コホートにおいてこの両者の関連を調査した。
方法
■ 子どものアレルギー疾患の診断は電子カルテから得た。
■ 母親と乳児の食事は自己申告によるものであった。
■ 調整済みパラメトリックWeibullの時間依存性モデルを用いて、母親の食事指数、乳児の食事の多様性と、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、喘息、喘鳴、IgE介在性食物アレルギー、喘鳴を除く複合アレルギー疾患のアウトカムの発症時期との関連を評価した。
結果
■ 1歳時点での乳児の食事の多様性は、1〜4歳の間の複合アウトカムのリスクと関連していた(p = .002)。
■ 母親の食事指数と1歳時点での乳児の食事の多様性の両方が、1〜4歳の間の複合アウトカムのリスクと関連していたが(両者ともp < .05)、1歳時点での乳児の食事の多様性は、母親の食事指数と1〜4歳の間の複合アウトカムのリスクとの関連を修飾しなかった(p = .5)。
■ 複合アレルギーアウトカムのリスクが最も低かったのは、母親の食事指数が高く、乳児の食事の多様性も高い群であった。
結論
■ 妊娠中の母親の食事指数と生後12ヶ月の乳児の食事の多様性の両方が複合アレルギー疾患のアウトカムのリスクと関連しているという新たな知見は、予防的介入の2つのターゲットを示唆している。
■ すなわち、妊娠中の母親の食事指数と乳児期の子供の食事の多様性である。
論文のまとめ
✅ 1歳時点での乳児の食事の多様性は、1〜4歳時の複合アレルギー疾患のリスクと関連していた(p = .002)。
【簡単な解説】 1歳の赤ちゃんが色々な種類の食べ物を食べているほど、1歳から4歳までの間にアレルギー疾患になりにくいことがわかりました。
✅母親の食事指数が高く、乳児の食事の多様性も高い群が、複合アレルギーのリスクが最も低かった。
【簡単な解説】 お母さんが妊娠中にバランスの良い食事をし、赤ちゃんも1歳までに色々な食べ物を食べている場合、その子どもが4歳までにアレルギー疾患になる可能性が最も低いことがわかりました。
※複合アレルギー疾患(combined allergic disease outcome)については、「喘鳴を除く任意のアレルギー疾患」と定義されています。
すなわち、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、喘息、IgE依存性食物アレルギーのうち、少なくとも1つの診断を受けた場合を指しています。
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