『針恐怖症』は、実際にどれくらいある?

医療現場での課題として注目されている『注射針への恐怖心』の実態と影響は?

■ 治療や検査において、『注射』は必要な処置ですし、変わる方法がない場合も少なくありません。
■ しかし、針を使う処置を極端に怖がり避ける『針恐怖症』は、医療現場で重要な問題となる場合があります。

■ 針恐怖と針恐怖症は似ていますが、針恐怖症はより重度の精神疾患です。針恐怖症の人は、針を見るだけで血圧が急に変動したり、失神したりすることがあります。

■ 世界保健機関(WHO)の研究によると、1人あたり年間2〜11回の注射が行われているそうです。

■ しかし、針恐怖症のために予防接種を避けたり、必要な治療を受けられない人がいることが問題になります。
■ 針恐怖症は、一般的な針への恐怖よりも珍しいものですが、過去の痛みを伴う経験が原因で起こることがあります。

■ では、針恐怖・針恐怖症はどれくらいの頻度であるのでしょうか?
■ 最近のメタアナリシスを共有します。

McLenon J, Rogers MAM. The fear of needles: A systematic review and meta-analysis. J Adv Nurs 2019; 75:30-42.

119の原著論文(うち35論文がメタアナリシスに使用された)を対象とし、MEDLINE、Embase、PsycINFO、CINAHLのデータベースを用いてシステマティックレビューとメタアナリシスを行った。

目的

■ 本研究の目的は、針恐怖の有病率を評価し、この恐怖を示す個人の特徴を要約することである。

背景

■ 注射は最も一般的な医療処置の1つであるが、針恐怖により予防措置や治療を避ける結果となることがある。

デザイン

■ システマティックレビューとメタアナリシス。

データソース

■ MEDLINE (1966–2017年)、Embase (1947–2017年)、PsycINFO (1967–2017年)、CINAHL (1961–2017年)を検索した。年齢、性別、人種、言語、国による制限は設けなかった。

方法

■ 針恐怖の有病率を算出し、メタアナリシスとメタ回帰にはrestricted maximum likelihood random effectsモデルを使用した。

結果

■ 検索の結果、本レビューに含まれる119の原著論文が得られ、そのうち35論文がメタアナリシスに十分な情報を含んでいた。

■ 子どもの大多数が針恐怖を示し、青年期の針恐怖の有病率推定値は20-50%、若年成人では20-30%の範囲であった。

■ 一般に、針恐怖は年齢とともに減少した。
■ 針恐怖と針恐怖症はともに、男性よりも女性で有病率が高かった。

■ インフルエンザ予防接種を針恐怖のために避けるのは、成人患者の16%、病院職員の27%、長期療養施設の職員の18%、病院の医療従事者の8%だった。

■ 静脈穿刺、献血、注射を必要とする慢性疾患患者において針恐怖は一般的だった。

結論

■ 予防ケアを必要とする患者や治療中の患者において、針恐怖は一般的だった。
■ ハイリスク群の恐怖を軽減する介入にさらなる注目を向けるべきである。

 

 

論文のまとめ

✅針恐怖の有病率は年齢とともに減少し、10歳年齢が上がるごとに8.7%(95%信頼区間: 6.0%, 11.4%)低下した(p < 0.001)。
【簡単な解説】 針恐怖は年を取るにつれて少なくなることがわかりました。10歳年を取るごとに、約9%の人が針恐怖でなくなるという結果でした。

✅針恐怖と針恐怖症はともに男性よりも女性で有病率が高く、針恐怖の女性:男性有病率比は1.4(95%信頼区間: 1.1, 1.8)、針恐怖症では1.7(95%信頼区間: 1.3, 2.1)だった。
【簡単な解説】 女性は男性よりも針恐怖になりやすいことがわかりました。針恐怖の場合、女性は男性の1.4倍、針恐怖症の場合は1.7倍の割合で発生しています。

 

 

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