アトピー性皮膚炎治療の外用薬、新旧さまざま。効果や安全性を比較した新しい研究結果が報告されました。
■ アトピー性皮膚炎の治療には、主に皮膚に直接塗る薬が使われています。
■ ステロイド外用薬は70年以上の歴史がありますが、最近では新しいタイプの薬も開発されています。
■ 例えば、タクロリムス、JAK阻害薬、PDE4阻害薬、アリール炭化水素調整薬などです。
■ そして、これらの新規抗炎症薬に関して、『どれがよく効く(強い)のですか?』という質問は多いです。
■ 個人的にこの質問は、『野球とサッカーとバレー、どれが一番強いのですか?』というテーマと思いますし、本質的に答えることが難しい質問だと思います。そもそも、それぞれの個性を活かして使うべきなのです。
■ そもそも、これらの薬の効果や安全性を比較した研究はほとんどありません。そこで、「ネットワークメタアナリシス」という特別な方法を使って、いろいろな塗り薬の効果と安全性を比べた研究が行われました。
Lax Stephanie J, Van Vogt E, Candy B, Steele L, Reynolds C, Stuart B, et al. Topical Anti-Inflammatory Treatments for Eczema: A Cochrane Systematic Review and Network Meta-Analysis. Clinical & Experimental Allergy; n/a.
291試験(45,846名)のアトピー性皮膚炎患者を対象に、主に高所得国で、ステロイド外用薬、カルシニューリン阻害薬、PDE4阻害薬、JAK阻害薬などの抗炎症外用薬を使用した研究のネットワークメタアナリシスを実施した。
目的
■ アトピー性皮膚炎は世界で最も負担の大きい皮膚疾患であり、抗炎症治療外用薬が症状のコントロールに一般的に使用されている。
■ さまざまな抗炎症治療外用薬の相対的な有効性と安全性は不確実である。
方法
■ コクランシステマティックレビュー内でネットワークメタアナリシスを実施し、抗炎症アトピー性皮膚炎外用薬の有効性と安全性を比較し統計的にランク付けした。
■ 2023年6月までのCochrane Skin Specialised Register、CENTRAL、MEDLINE、Embase、臨床試験登録を検索した。
■ 適格基準を満たす試験は、被験者内または被験者間ランダム化比較試験とした。
■ 参加者は臨床的に感染していないアトピー性皮膚炎患者で、接触皮膚炎、脂漏性湿疹、手湿疹は除外した。
■ 介入は抗炎症外用薬とし、補完療法、抗生物質単独、湿布療法、光線療法、全身療法は除外した。
■ 比較対照は無治療/基剤または他の抗炎症外用薬とした。
結果
■ 291試験(45,846名の参加者)を特定し、主に高所得国で実施されていた。
■ ほとんどが企業資金提供による試験で、治療期間の中央値は3週間だった。
■ Cochrane Risk of Bias 2.0ツールを用いたバイアスリスク評価では、主に選択的報告のリスクにより89%の試験がハイリスクだった。
■ 二値アウトカムのネットワークメタアナリシスでは、強力および/または非常に強力なステロイド外用薬、タクロリムス0.1%、ルキソリチニブ1.5%が、患者報告症状(40試験、全て低信頼度)と医師が報告した徴候(32試験、全て中等度信頼度)の改善に最も効果的な治療法としてランク付けされた。
■ 医師による全般的評価では、JAK阻害薬のルキソリチニブ1.5%、デルゴシチニブ0.5%または0.25%、非常に強力/強力なステロイド外用薬、タクロリムス0.1%が最も効果的とランク付けされた(140試験、全て中等度信頼度)。
■ 連続アウトカムデータが混在していた。
■ 外用部位反応はタクロリムス0.1%(中等度信頼度)とクリサボロール2%(高信頼度)で最も多く、ステロイド外用薬(中等度信頼度)で最も少なかった。
■ 短期使用ではステロイド外用薬の強さに関わらず皮膚菲薄化は増加しなかったが(低信頼度)、長期使用(6-60ヶ月)では2044名中6名(0.3%)に皮膚菲薄化が報告された。
結論
■ 強力なステロイド外用薬、JAK阻害薬、タクロリムス0.1%が、アトピー性皮膚炎に対する最も効果的な抗炎症外用薬として一貫してランク付けされた。
論文のまとめ
✅強いおよび/または非常に強いランクのステロイド外用薬、タクロリムス0.1%、ルキソリチニブ1.5%が、患者報告症状と医師が報告した徴候の改善に最も効果的な治療法としてランク付けされた。
【簡単な解説】 強いステロイド外用薬や、タクロリムスやルキソリチニブ外用薬が、症状や医師が見た症状を最もよく改善させることがわかりました。
✅長期使用(6-60ヶ月)では2044名中6名(0.3%)に皮膚菲薄化が報告された一方、短期使用ではステロイド外用薬の強さに関わらず皮膚菲薄化は増加しなかった。
【簡単な解説】 短い期間使う分には、ステロイドの塗り薬で皮膚が薄くなることはなかったですが、長い間使い続けると、100人に1人くらいの割合で皮膚が薄くなることがあるという結果になりました。
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