
クループは幼児に多い呼吸器の病気で、夜間の救急外来受診の原因になりやすい。そして、クループに冷たい空気が有効か、ランダム化比較試験で調査されました。
■ クループとは、赤ちゃんや小さな子ども(6ヶ月から3歳くらい)に見られる、上気道(喉頭や気管)が炎症を起こし腫れることによって引き起こされる病気です。
■ そして、オットセイのような特徴的な咳や、息を吸う時に喘鳴が聞こえるようになります。
■ クループは軽症が多いのですが、今のように様々な風邪が流行すると増え、救急外来に受診される原因のひとつになっています。
■ そもそも、2歳未満の子どもの救急外来受診の3%から5%がクループによるものなのだそうです。
■ クループの主な治療法は、デキサメタゾンというステロイド薬の内服です。そして日本では、アドレナリンの吸入を先に行うこともあります。
■ 一方で、『冷たい空気を吸うと症状が良くなる』という経験則がありました。
■ しかし、それが本当に効くのかどうか、科学的な証拠がありませんでした。
■ そこで、軽症もしくは中等症のクループの子どもたちを対象に、30分間冷たい外の空気を吸わせ、その効果を室内の普通の空気を吸った場合と比べてみるという研究が行われました。
Siebert JN, Salomon C, Taddeo I, Gervaix A, Combescure C, Lacroix L. Outdoor Cold Air Versus Room Temperature Exposure for Croup Symptoms: A Randomized Controlled Trial. Pediatrics 2023.
クループがあり、Westleyクループスコア(WCS)が2点以上の3か月から10歳の小児118名を対象に、トリアージ後すぐに30分間屋外の冷気(<10℃)または室内の常温空気のいずれかに曝露するようランダムに割り付け、効果を確認した。
目的
■ クループは小児における急性上気道閉塞の最も一般的な原因である。
■ ステロイド治療のクループに対する有効性は十分に確立されており、投与30分後から効果が現れ始める。
■ そこで、ステロイドの作用開始前の30分間、屋外の冷気への曝露が軽度から中等度のクループ症状を改善させるかどうかを調査した。
方法
■ この非盲検、単施設、ランダム化比較試験では、クループを有し、Westleyクループスコア(WCS)が2点以上の3か月から10歳の小児を三次小児救急部門で登録した。
■ 参加者は(1:1の割合で)トリアージ後すぐに、30分間屋外の冷気(<10℃)または室内の常温空気のいずれかに曝露するようランダムに割り付けられた。
■ 主要評価項目は、ベースラインから30分後にWCSが2点以上低下することと定義された臨床的改善を示した患者の率だった。
■ 解析はIntention-to-treatで行われた。
結果
■ 計118人の参加者が屋外冷気群(n=59)または室内常温群(n=59)にランダムに割り付けられた。
■ 屋外群の59人中29人(49.2%)と室内群の59人中14人(23.7%)が、トリアージから30分後にベースラインからWCSが2点以上低下を示した(リスク差25.4% [95%信頼区間 7.0-43.9], P=0.007)。
■ 中等症のクループの患者が30分時点で最も介入の恩恵を受けた(リスク差46.1% [20.6-71.5], P<0.001)。
結論
■ 経口デキサメタゾンの補助療法として、30分間の屋外冷気(<10℃)への曝露は、クループのある小児の臨床症状の強度を軽減するのに有益で、特に中等度のクループで効果的である。
論文のまとめ
✅️屋外冷気暴露群の59人中29人(49.2%)と室内群の59人中14人(23.7%)が、トリアージから30分後にベースラインからWCSが2点以上低下を示した(リスク差25.4% [95%信頼区間 7.0-43.9], P=0.007)。
【簡単な解説】 クループの子どもたちを2つのグループに分け、1つのグループは冷たい外の空気を30分間吸い、もう1つのグループは普通の室内にいてもらいました。その結果、冷たい空気を吸ったグループの方が、症状が改善した子どもの割合が多かったです。
✅️中等症のクループの患者が30分時点で最も介入の恩恵を受けた(リスク差46.1% [20.6-71.5], P<0.001)。
【簡単な解説】 症状が中くらいの重さの子どもたちで、特に、冷たい空気を吸うことの効果が大きかったことがわかりました。
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