慢性手湿疹に対するデルゴシチニブの有効性と安全性とは?

日本でアトピー性皮膚炎に有効性が示され保険適用になっているデルゴシチニブが、慢性手湿疹に効果的であることが、Lancetに報告されました。

■ 慢性手湿疹は、手や手首に湿疹が長期間続く病気で、痒みや痛みが伴います。この病気は女性に多く見られ、仕事や日常生活に支障をきたすことがあります。
■ アトピー性皮膚炎における合併症でもあり、私も普段の診療でおおく経験します。

■ 今まで、この病気に対してはステロイドがよく使われていましたが、長期間使うと皮膚が薄くなる副作用がありました。

■ 他には、アルイトレチノインという飲み薬も一部の国では使われていますが、外用薬で効果的なものは少なかったのです。

■ デルゴシチニブという新しい薬は、炎症を引き起こす「JAK」という酵素を抑えることで、湿疹の症状を改善する効果が期待されています。
■ 第2相試験でデルゴシチニブの効果が確認され、第3相試験であるDELTA 1 とDELTA 2試験ではさらにその安全性や効果が詳しく調べられ、最近、Lancet誌にその結果が報告されました。

Bissonnette R, Warren RB, Pinter A, Agner T, Gooderham M, Schuttelaar MLA, et al. Efficacy and safety of delgocitinib cream in adults with moderate to severe chronic hand eczema (DELTA 1 and DELTA 2): results from multicentre, randomised, controlled, double-blind, phase 3 trials. The Lancet 2024; 404:461-73.

中等度から重度の慢性手湿疹のある成人487人(DELTA 1試験)および473人(DELTA 2試験)を対象に、デルゴシチニブクリーム20 mg/gまたは基剤を1日2回、16週間塗布する方法で無作為化比較試験が行われた。

背景

■ 慢性手湿疹は、手や手首に発症する、炎症性で、かゆみを伴い、しばしば痛みを伴う、変動性の疾患である。
■ 患者の生活の質と職業能力に大きな影響を与える。
■ 第3フェーズDELTA 1/DELTA 2試験の目的は、中等度から重度の慢性手湿疹を有する成人における外用汎JAK阻害薬デルゴシチニブクリーム20 mg/gの1日2回塗布の有効性と安全性を、クリーム基剤と比較して評価することだった。

方法

■ 両試験はランダム化、二重盲検、基剤対照試験であり、DELTA 1はカナダ、フランス、ドイツ、イタリア、ポーランド、英国の53試験施設で、DELTA 2はベルギー、カナダ、デンマーク、ドイツ、オランダ、ポーランド、スペインの50試験施設で実施された。
■ 中等度から重度の慢性手湿疹を有する成人(18歳以上)を2:1の割合でデルゴシチニブクリーム20 mg/gまたは基剤に16週間無作為に割り付けた。
■ 主要評価項目は16週時点での慢性手湿疹に対する医師による全般評価(IGA-CHE)の治療成功であり、IGA-CHEスコア0(消失)または1(ほぼ消失、わずかに認識できる程度の紅斑のみと定義)と定義された。
■ 有効性と安全性は、治験薬に曝露されたすべての患者で評価された。
■ これらの試験はClinicalTrials.govに登録されている(NCT04871711、NCT04872101)。

結果

■ 2021年5月10日から2022年10月31日に、487人の患者(男性181人、女性306人)がDELTA 1に登録された。
■ 2021年5月25日から2023年1月6日に、473人の患者(男性161人、女性312人)がDELTA 2に登録された。
■ DELTA 1では325人、DELTA 2では314人がデルゴシチニブクリームに割り付けられ、DELTA 1では162人、DELTA 2では159人が基剤に割り付けられた。
■ 16週時点で、デルゴシチニブ治療群では、基剤群と比較して、より高い割合の患者がIGA-CHE治療成功を達成した(DELTA 1では325人中64人[20%] vs 162人中16人[10%]、DELTA 2では313人中91人[29%] vs 159人中11人[7%]、両試験ともp≤0.0055)。

■ 有害事象を報告した患者の割合は、デルゴシチニブ(DELTA 1で325人中147人[45%]、DELTA 2で313人中143人[46%])と基剤(DELTA 1で162人中82人[51%]、DELTA 2で159人中71人[45%])で同様であった。
■ 両治療群で最も頻繁に発生した有害事象(患者の少なくとも2%に発生)は同様であり、COVID-19と鼻咽頭炎が含まれていた。

結論

■ 全体として、デルゴシチニブクリームは16週間にわたって基剤と比較して優れた有効性を示し、忍容性も良好だった。
■ これらの結果は、基本的なスキンケアとステロイド外用薬で十分に疾患をコントロールできない中等度から重度の慢性手湿疹患者に対する潜在的な治療選択肢としてのデルゴシチニブクリームの臨床的有用性を支持している。

 

 

論文のまとめ

✅️ DELTA 1試験では、16週間後にデルゴシチニブ群の64人(20%)が治療成功を達成し、基剤群では16人(10%)にとどまり、DELTA 2ではデルゴシチニブ群の91人(29%)が治療成功を達成し、基剤群では11人(7%)にとどまった。
【簡単な解説】16週間後に湿疹がほぼ消えたと判断された人の割合が、DELTA 1試験ではデルゴシチニブを使った人が20%、薬を使わなかった人が10%でした。DELTA 2試験では、薬を使った人が29%、使わなかった人が7%でした。
✅️ HECSIスコアが75%以上改善した患者は、DELTA 1試験で49.2%、DELTA 2試験で49.5%であり、基剤群よりも有意に高い改善が見られた。
【簡単な解説】 湿疹の症状が75%以上よくなった人の割合が、デルゴシチニブを使ったグループでは約半数に達し、薬を使わなかったグループと比べて、症状の改善が顕著に見られました。

 

 

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