デルゴシチニブ(コレクチム)とジファミラスト(モイゼルト)、有効性と安全性に差があるか?

子どものアトピー性皮膚炎に広く使われるようになってきたデルゴシチニブとジファミラストの効果を統計的に比較した研究が報告されました。

■ アトピー性皮膚炎に対する抗炎症薬はどんどん増えてきています。

■ 外用治療には、従来からステロイド外用薬やタクロリムス軟膏が使われてきましたが、外用JAK阻害薬デルゴシチニブ(商品名コレクチム)、外用PDE4阻害薬ジファミラスト(商品名モイゼルト)、そして外用AhR調整薬タピナロフ(商品名ブイタマー)が登場してきました。

■ しかし、さまざまな薬剤が使用できるようになり、「どの薬剤がより有効なのですか?」という質問をよく受けるようになりました。
■ 個人的には、この質問は、「野球とサッカーとバレーは、どれが一番強いのですか?」という質問に似ていると思っています。
■ すなわち、「ひとにより、向いているものが違う」というのが答えと言えます。

■ しかし、それでも比較したくなるのが人情ですよね。
■ 特に、現在ひろく使用されるようになってきているデルゴシチニブとジファミラストは比較したくなります。

■ しかし実際には、この2つの薬を直接比べる研究はまだ行われていません。
■ そこで、「マッチング調整間接比較(MAIC)」という統計方法を使って、間接的に2つの薬を比べた研究が、九州大学の中原先生らのグループから報告されていました。

Nakahara T, Murota H, Matsukawa M, Takeda H, Zhang Y, Kondo T. Matching-Adjusted Indirect Comparison of the Efficacy and Safety of Difamilast 1% and Delgocitinib 0.5% in Patients with Moderate-to-Severe Atopic Dermatitis. Dermatology and Therapy 2024:1-12.

日本の中等度から重度のアトピー性皮膚炎患者498人(ジファミラスト群340人、デルゴシチニブ群158人)を対象に、4週間の治療期間でマッチング調整間接比較(MAIC)を用いて両薬剤の効果と安全性を比較した。

背景

■ アトピー性皮膚炎は慢性疾患であり、日本での発生率が増加している。
■ ジファミラストとデルゴシチニブは、日本での第2相および第3相臨床試験で有効性と安全性が証明された新しい外用薬である。
■ しかし、これらの薬剤の有効性と安全性を直接比較した試験は存在しない。

目的

■ 本研究の目的は、マッチング調整間接比較(Matching-Adjusted Indirect Comparison; MAIC)を用いて、中等度から重度のアトピー性皮膚炎患者におけるディファミラストとデルゴシチニブの重症度別の患者割合を決定し、臨床的有効性と安全性を比較することである。

方法

■ アトピー性皮膚炎治療に関するジファミラストとデルゴシチニブの第3相臨床試験を対象とした。

■ 両試験は類似した設計であったが、ベースラインの患者特性に違いがあった。
■ アンカー付きMAICを用いてベースライン特性を調整し、臨床的アウトカムを計算した。

■ 主要アウトカムは、湿疹面積重症度指数(EASI)を通じてアトピー性皮膚炎の重症度段階における患者の割合を決定することであった。
■ 副次的アウトカムには、他の臨床的有効性とジファミラストとデルゴシチニブの安全性の比較が含まれた。

結果

■ 分析対象として、ジファミラスト試験から340人(ディファミラスト群170人、プラセボ群170人)、デルゴシチニブ試験から158人(デルゴシチニブ群106人、プラセボ群52人)が選択された。

■ ジファミラスト試験の患者をデルゴシチニブ試験の患者とマッチングした後、有効サンプルサイズ(Effective Sample Size; ESS)は元のジファミラスト(治療/プラセボ)患者の32.7~43.3%に減少した。

■ 4週目において、ジファミラスト群のESSは、EASIスコアに基づくアトピー性皮膚炎の重症度段階の分布において、デルゴシチニブ群と統計的に有意な差を示さなかった。
■ さらに、修正EASI(mEASI)スコア、mEASI 50および75スコア、安全性アウトカムにおいても、2つの治療法間に有意な差は認められなかった。

結論

■ アンカー付きMAIC分析は、ジファミラスト治療がデルゴシチニブと同様に、日本の中等度から重度のアトピー性皮膚炎患者の治療に有用な選択肢であることを示している。

 

 

論文のまとめ

✅️4週目におけるEASIスコアに基づくアトピー性皮膚炎の重症度を比較すると、ジファミラスト群とデルゴシチニブ群に統計的に有意差は認められなかった。
【簡単な解説】 アトピー性皮膚炎の症状がどのくらい重いかを数字で表したEASIスコアは、4週間の治療後、ジファミラスト群とデルゴシチニブ群に大きな違いがなかったです。

✅️mEASIスコア、mEASI 50、mEASI75、安全性アウトカムにおいても、ジファミラスト群とデルゴシチニブ群に有意な差は認められなかった。
【簡単な解説】 症状の改善度を示す指標であるmEASIスコアのうち、mEASI 50(症状スコアが50%以上改善した人の割合)、mEASI 75(75%以上スコアが改善)、副作用に関し、2つの薬に大きな違いがなかったです。

 

 

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