アトピー性皮膚炎に対し、デュピルマブの有効性が高い患者像とは?

アトピー性皮膚炎の新薬デュピルマブ。多くの患者に効果があるものの、効果の予測因子を探る研究が進んでいます。

■ アトピー性皮膚炎は、遺伝子や免疫システム、皮膚のバリア機能、細菌叢、環境要因など、様々な要因が複雑に絡み合って起こる慢性的な皮膚の病気です。

■ 最近の研究では、アトピー性皮膚炎に9.2%がかかっていて、特に5歳未満の小さな子どもでは16.3%と多いことがわかっています。アトピー性皮膚炎の患者さんは、強いかゆみと繰り返す湿疹に悩まされます。特に重症の患者さんでは、96%もの方が日常生活に大きな影響があると答えています。

■ 基本的な治療は、外用薬(ステロイド外用薬やカルシニューリン阻害薬)によりますが、症状が中程度以上の患者の場合は、全身治療が必要になることがあります。

■ 広く使われるようになっているのが、バイオ製剤の一つデュピルマブであす。投与開始40週間で約70%の患者に効果が見られるという報告があります。

■ しかし逆に言うと、30%程度の患者には十分な効果が得られていないということでもあります。

■ では、どういう患者さんにデュピルマブが効きやすいのでしょうか?最近、メタアナリシスが報告されました。

Chokevittaya P, Jirattikanwong N, Thongngarm T, Phinyo P, Wongsa C. Factors Associated with Dupilumab Response in Atopic Dermatitis: A Systematic Review and Meta-Analysis. The Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice.

中等症から重症のアトピー性皮膚炎患者5,575例を対象に、デュピルマブ投与の効果を12-16週間にわたって評価した21研究を系統的にレビューした。

背景

■ デュピルマブは中等症から重症のアトピー性皮膚炎の治療薬として承認されている。
■ しかし、かなりの割合の患者が不十分な反応しか示さず、デュピルマブの治療反応に関連する因子については限定的な知見しかない。

目的

■ アトピー性皮膚炎におけるデュピルマブの治療反応に関連する因子を系統的にレビューし確立する。

方法

■ PubMed、MEDLINE、Embase、Ovid、Cochrane Center of Controlled Trialsのデータベースを創刊から2023年3月まで検索した。
■ 主要評価項目は、アトピー性皮膚炎におけるデュピルマブ反応に関連する因子とした。

■ 12-16週時点でのEASIスコアの75%改善に関連するオッズ比と95%信頼区間をランダム効果メタ解析を用いて統合した。

結果

■ アトピー性皮膚炎患者5,575例を含む21研究のうち、3研究はデュピルマブの第3相試験の事後解析、12研究は後ろ向き研究、6研究は前向き研究だった。

■ 12-16週時点でのEASI75達成で定義されるデュピルマブの良好な反応に関連する因子には、女性(オッズ比[95%信頼区間] = 2.16 [1.38-3.38])、若年齢(2.81 [1.64-4.81])、アレルギー性鼻炎の非合併(2.64 [1.07-6.50])、低BMI(1.97 [1.18-3.30])、低血中好酸球数(6.47 [3.36-12.48])が含まれた。しかし、エビデンスの確実性は非常に低かった。
■ 発症年齢、ベースラインのEASIスコア、総IgE値、血清LDH値はデュピルマブ反応との関連を認めなかった。

結論

■ アトピー性皮膚炎患者において、女性、若年齢、アレルギー性鼻炎の非合併、低BMI、低血中好酸球数がデュピルマブの良好な治療反応と関連していた。
■ これらの因子は、臨床実践においてデュピルマブ治療を検討する際に考慮されるべきである。

 

 

論文のまとめ

✅️ デュピルマブの治療効果が高かった因子として、女性、年齢が低い、アレルギー性鼻炎がないこと、体格指数(BMI)が低いこと、血液中好酸球数が少ないことの5つが特定された。
【簡単な解説】
・治療効果が高かった人の特徴が5つ見つかりました。女性、若い人、アレルギー性鼻炎がない人、痩せ型の人、血液検査で好酸球という細胞が少ない人。
✅️ 一方、発症年齢、治療開始時の皮膚症状の重症度、アレルギーの指標となるIgE値、血清LDH値は、治療効果との関連が認められなかった。
【簡単な解説】一方で、以下の項目は治療効果と関係がありませんでした。いつアトピーが始まったか、治療前の症状の重さ、アレルギーの血液検査の値、組織の炎症を示すLDHという検査値

 

 

※論文の背景や内容の深掘り、個人的な感想は、noteメンバーシップにまとめました。

※登録無料のニュースレター(メールマガジン)は、一部有料会員向けも始めていますが、定期的に無料記事も公開予定です。さまざまなテーマを深堀り解説していきますので、ご興味がございましたらリンクからご登録ください。

 

このブログは、私の普段の勉強の備忘録やメモを記録しているものですので、細かい誤字脱字はご容赦ください。
基本的に医療者向けで、申し訳ありませんが、質問には基本的にお答えしておりません。

知識の共有を目的に公開しておりますが、追加して述べる管理人の意見はあくまでも個人としての私見です。
所属するいかなる団体の立場も代表するものではありませんし、すべての方に向いているという情報でもありません。予めご了承いただきたく存じます。

このブログの『リンク』は構いません。
しかし、文章やアイデアを盗用・剽窃・不適切な引用したり、許可なくメディア(動画を含む)に寄稿することはご遠慮ください。
クローズドな場での勉強会などに使用していただくことは構いません。
Instagram:2ヶ月で10000フォロワーを超えました!!!

Xでフォローしよう