デュピルマブ使用しているときに、生ワクチンを使用すると有害事象が増えるか?|2024年10月31日

デュピルマブ治療中に生ワクチンを接種すると大きな問題が起こるか?

■ 経鼻生インフルエンザワクチンの接種が開始されました。
■ そのなかで問題点としてあるのが、デュピルマブ(デュピクセント)を使用中の患者さんへの対応です。

■ すなわち現状では、デュピルマブを使用中に生ワクチンを接種する場合、一定の期間をあける必要があります。

■ 具体的には、生ワクチンの接種前後にデュピルマブの投与を中止することが一般的なガイドラインとなっています。
■ 例えば、生ワクチンを接種する予定がある場合、デュピルマブの投与を12週間前から中止することが推奨されています。
■ そして、生ワクチン接種後は、少なくとも4週間はデュピルマブの投与を再開しないことが推奨されています。

■ そのため現状では、デュピルマブを使用中の患者さんには、生ワクチンの接種は難しくなり、従来の不活化ワクチンをお勧めせざるを得ない状況です。

■ 一方で、デュピルマブ使用中に生ワクチン接種が行われた事例が複数報告されています。
■ 特に、大規模な臨床試験中(LIBERTY AD PRESCHOOL Part A/Bと、LIBERTY AD PED-OLE)に予定外の生ワクチン接種が発生する事例が確認されています。
■ このような状況下で生ワクチンを接種した小児9名の症例シリーズ研究の結果が報告されています。

※共有した研究結果では問題はなかったとされていますが、現状ではデュピルマブ使用中の生ワクチンを、短期間で使用することを推奨できません。

Siegfried EC, Wine Lee L, Spergel JM, Prescilla R, Uppal S, Coleman A, et al. A case series of live attenuated vaccine administration in dupilumab-treated children with atopic dermatitis. Pediatric Dermatology 2024; 41:204-9.

臨床試験中(LIBERTY AD PRESCHOOL Part A/Bと、LIBERTY AD PED-OLE)に、中等度から重症のアトピー性皮膚炎を有する6ヶ月〜5歳の小児9名(女児1名、男児8名)に対して、MMRワクチン単独または水痘ワクチンが予定外に接種された。

背景と目的

■ デュピルマブによる治療を受けている患者に対する生ワクチン使用は、避けることが、現行の規制表示で推奨されている。
■ デュピルマブ治療を受けている患者における生ワクチンまたは弱毒生ワクチンの投与に関する、より具体的な指針を支持する臨床データは現在不十分である。

方法

■ 中等度から重症のアトピー性皮膚炎を有する小児(6ヶ月〜5歳)が、デュピルマブのフェーズ2/3臨床試験(LIBERTY AD PRESCHOOL Part A/B; NCT03346434)に登録され、その後LIBERTY AD PED-OLE(NCT02612454)に参加した。
■ これらの試験期間中、9人の小児においてプロトコル逸脱が発生し、麻疹・おたふくかぜ・風疹(MMR)ワクチンを水痘ワクチンと共にまたは単独で接種した。
■ そのうち5人はデュピルマブ投与とワクチン接種の間隔が12週間以下であり、4人はデュピルマブ中止後12週間超の間隔があった。

結果

■ 9人の小児(女児1名、男児8名)はベースライン時に重症のアトピー性皮膚炎を有していた(8-56ヶ月齢)。
■ 9人のうち5人は、デュピルマブ投与とワクチン接種の間隔が1-7週間であり、MMRワクチン(n=2)またはMMRと水痘ワクチン(n=3)を接種した。
■ この中で、1人は接種後2日目という早期に、4人は接種後18-43日でデュピルマブ治療を再開した。
■ いずれの小児においても、ワクチン接種後4週間以内に治療下で発現した有害事象(重篤な有害事象および感染症を含む)は報告されなかった。

結論

■ 重症アトピー性皮膚炎を有し、デュピルマブ治療を受けている小児における本症例シリーズでは、MMRワクチンを水痘ワクチンと共にまたは単独で接種した後4週間以内に、有害作用(ワクチン関連感染症を含む)は報告されなかった。
■ デュピルマブ治療を受けている患者における生ワクチンの安全性、忍容性、免疫応答を評価するためには、さらなる研究が必要である。

 

 

論文のまとめ

✅️9名中5名は治療薬の最終投与から1-7週間という比較的短い期間でワクチン接種を実施し、そのうち1名は接種2日後、4名は18-43日後に治療を再開した。
【簡単な解説】 通常は治療薬を中止してから12週間待ってから予防接種をすることになっているが、この研究ではより短い期間で接種されていました。

✅️全症例において、ワクチン接種後4週間以内の有害事象(副反応や感染症を含む)は報告されなかった。
【簡単な解説】 予防接種後1ヶ月間、熱が出たり具合が悪くなったりする副作用はみられませんでした。

 

 

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