ピーナッツを5歳まで食べ続けて予防したピーナッツ耐性は、思春期まで継続するか?:LEAP-Trio試験

ピーナッツアレルギーの予防には、乳幼児期からの早期摂取が鍵となりますが、さらに長期的な研究が行われました。

■ ピーナッツアレルギーは、日本でも少なくなく、多くの場合、幼児期に発症し、一生続く可能性があります。

■ 2015年のLEAP試験では、ピーナッツアレルギーのリスクが高い赤ちゃんにピーナッツを早くから5歳まで食べさせると、ピーナッツアレルギーの発症を大幅に減らすというエポックメイキングな研究でした。

■ 具体的には、ピーナッツを食べた子供たちの3.2%しかアレルギーを発症せず、ピーナッツを避けていた子供たちの17.2%がアレルギーを発症していたことから、81%の発症リスク減少がみられたとされました。

■ さらにその後の研究で、5歳に達した子どもたち全員にピーナッツを1年避けてもらってももこの効果が続くことが分かりました。

■ しかし、さらに長い期間、この予防効果が続くのかはわかっていませんでした​。

■ そこで、そのLEAP試験に参加した子どもたちが思春期(12歳)に達するまでその効果が続いているかどうかが調査されました。
■ また、「寛容」といって、特別に意識して食べ続けなくてもアレルギー反応が起きない状態が長続きするかを確認することも目指されました。
■ 試験の名称は「LEAP-Trio試験」と名付けられています。

※乳児期に粒のピーナッツを食べるのはリスクがあります。開始時は医師の指導を要すると思われます。

Du Toit G, Huffaker MF, Radulovic S, Feeney M, Fisher HR, Byron M, et al. Follow-up to Adolescence after Early Peanut Introduction for Allergy Prevention. NEJM Evid 2024; 3:EVIDoa2300311.

LEAP試験に参加した640名のうち508名(79.4%)を対象とし、乳幼児期のピーナッツ摂取群と回避群における144ヶ月(12歳)時点でのアレルギー発症率を比較検討した。

背景

■ 生後5歳までピーナッツを摂取することでピーナッツアレルギーの発症を防ぐことができることが、無作為化試験で示された。
■ この試験の延長拡張調査では、1年間のピーナッツ摂取回避後もその効果が持続することが確認された。
■ 本研究は、成長後のピーナッツ耐性が144か月(12歳)にわたり持続するかどうかを調査することを目的とする。

方法

■ 無作為化ピーナッツ摂取試験に参加した被験者を対象に、延長期間の自由なピーナッツ摂取または回避後のピーナッツアレルギー発症率を評価した。

■ 主要評価項目は、144か月時点でのピーナッツアレルギー率だった。

結果

■ 元の640名の参加者のうち508名(79.4%)が本試験に登録され、497名が主要評価項目データを完了した。
■ 144か月時点では、ピーナッツ摂取群と回避群の間でピーナッツアレルギーの発症率に有意な差が確認され、元の回避群での発症率は摂取群に比べて顕著に高かった(回避群15.4% [246名中38名] 対 摂取群4.4% [251名中11名], P<0.001)。
■ 両群ともに72か月から144か月まで長期間ピーナッツを回避する傾向が見られたが、摂取群ではピーナッツアレルギーに関連するAra h2特異的IgE値は0.03–3.42 kU/l、ピーナッツ特異的IgG4値は535.5–4.98 mg/lであった一方、回避群ではそれぞれ0.06–11.21 kU/lおよび209.3–3.84 mg/lだった。
■ 食物摂取試験に関連する軽微な有害事象が発生したが、重大なものはなかった。

結論

■ 生後5歳までピーナッツを摂取することは、その後のピーナッツ摂取に関係なく、思春期までの耐性を維持し、長期的なアレルギー予防および耐性維持が可能であることが示唆された。

 

 

論文のまとめ

✅️ 144ヶ月時点でのピーナッツアレルギー発症率は、摂取群が4.4%(251名中11名)であったのに対し、回避群では15.4%(246名中38名)と有意に高値だった(P<0.001)。
【簡単な解説】 赤ちゃんの頃からピーナッツを食べていた子どもは、食べていなかった子どもと比べて、12歳時点でのアレルギーの発症率が約3分の1と大幅に低かった。

✅️ 摂取群では、一時的にピーナッツを避けた期間があっても144ヶ月までに摂取を再開した際にアレルギー反応を示さず、幼少期からの摂取による耐性が思春期まで持続することが示された。
【簡単な解説】 赤ちゃんの頃からピーナッツを食べていた子どもは、途中で食べるのを一時的に中止しても、再び食べ始めた時にアレルギー反応を起こさなかった。これは、早い時期からピーナッツを食べることで得られた体の抵抗力が、12歳まで続くことを示しています。

 

 

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