アトピー性皮膚炎の全身治療薬の治療効果を比較した最新研究が、BJDに発表されていました。
■ アトピー性皮膚炎の新薬が次々と開発されています。
■ しかし、それぞれの薬を直接比べる研究は少なかったのが現状です。
■ しかし、最近の新薬の研究では、「効いた」か「効かなかった」かという単純な判断を重視する傾向にあります。
■ これは、米国のFDAやヨーロッパの医薬品規制当局が、そのような評価方法を求めているからといえます。
■ 最近、ネットワークメタアナリシスを使用して、様々な治療薬の効果を比較した研究が発表されていました。
■ そして、さらに新しい研究がBJDに発表されていました。
■ 学会などで引用されることの多い論文ですが、あらためて読んでみました。
Drucker AM, Lam M, Elsawi R, Prieto-Merino D, Malek R, Ellis AG, et al. Comparing binary efficacy outcomes for systemic immunomodulatory treatments for atopic dermatitis in a living systematic review and network meta-analysis. Br J Dermatol 2024; 190:184-90.
中等度から重症のアトピー性皮膚炎患者22,122名を対象に、8週間以上の全身性免疫調節薬による治療効果を83試験のランダム化比較試験で評価した。
背景
■ アトピー性皮膚炎に対する全身性免疫調節治療は、主にプラセボ対照試験で二値的な有効性評価項目を用いて評価されている。
■ 以前、継続的システマティックレビューとネットワークメタアナリシス(NMA)において、連続的な有効性指標の分析を行った。
目的
■ アトピー性皮膚炎に対する全身性治療の二値的な有効性評価項目を比較することである。
結果
■ システマティックレビューには83試験、22,122名の参加者が含まれた。
■ 主に成人を対象とした8-16週間の試験に限定した分析では、アブロシチニブ200mg/日(オッズ比1.5、95%信用区間1.1-2.2)およびウパダシチニブ15mg/日(オッズ比1.7、95%信用区間0.9-3.3)と30mg/日(オッズ比2.5、95%信用区間1.3-5.0)は、デュピルマブと比較してEASI 50達成のオッズが高かった。
■ アブロシチニブ100mg/日(オッズ比0.7、95%信用区間0.5-1.0)、バリシチニブ2mg/日(オッズ比0.4、95%信用区間0.3-0.5)および4mg/日(オッズ比0.5、95%信用区間0.3-0.7)、トラロキヌマブ(オッズ比0.4、95%信用区間0.3-0.6)は、デュピルマブと比較してEASI 50達成のオッズが低かった。
■ EASI 75、EASI 90、IGA成功についても同様の結果であった。
結論
■ 連続的な評価項目の結果を支持する形で、成人の中等度から重症のアトピー性皮膚炎において、ウパダシチニブ30mg/日とアブロシチニブ200mg/日が16週までの二値的な有効性評価項目に関して最も有効であり、次いでウパダシチニブ15mg/日、デュピルマブ、アブロシチニブ100mg/日の順であった。
■ デュピルマブおよびウパダシチニブとアブロシチニブの両用量は、バリシチニブ4mgと2mg/日およびトラロキヌマブよりも有効性が高かった。
論文のまとめ
✅️ウパダシチニブ30mg/日とアブロシチニブ200mg/日は、デュピルマブと比較してEASI50達成率が有意に高く(それぞれオッズ比2.5、1.5)、最も効果的な治療薬であることが示された。
【簡単な解説】 ウパダシチニブという薬を1日30mg、またはアブロシチニブという薬を1日200mg使うと、今までよく使われているデュピルマブという注射薬よりも、皮膚の症状がよくなる人が多かったということです。
✅️バリシチニブ(2mg/日:オッズ比0.4、4mg/日:オッズ比0.5)とトラロキヌマブ(オッズ比0.4)は、デュピルマブと比較してEASI50達成率が有意に低かった。
【簡単な解説】 バリシチニブやトラロキヌマブという薬は、デュピルマブと比べると効果が半分程度しかなかったということです。
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