タピナロフ軟膏(ブイタマー)は皮膚バリア機能を8週間で改善させるかもしれない

アトピー性皮膚炎の新薬タピナロフ(商品名ブイタマー)が、皮膚の乾燥やバリア機能の低下を改善する可能性があることが報告されました。

■ アトピー性皮膚炎は、一般的な慢性の皮膚の病気です。
■ 目に見える皮膚の症状や、強いかゆみで眠れないことで、患者さんの生活の質が大きく低下させます。

■ そもそも、健常な皮膚と比較して、アトピー性皮膚炎のある皮膚では角層水分量(SCH)の低下と経皮水分蒸散量(TEWL)の増加が認められます。

■ 現在の主な治療であるステロイド軟膏は、継続して使用すると、その場所の皮膚が薄くなるなどの副作用が心配されます。

■ 最近、アリール炭化水素受容体調整薬タピナロフ(ブイタマー)が保険で処方が可能になりました。
■ しかし、現状ではまだまだ処方できるようになったばかりで、十分なデータは不足していると言えるでしょう。

■ そのようななか、タピナロフが皮膚バリア機能を改善させる可能性を示唆した報告がなされました。
■ 簡単に解説いたします。

Igarashi A, Tsuji G, Murata R, Fukasawa S, Yamane S. Improvement effects of tapinarof on the skin barrier function in Japanese patients with atopic dermatitis. Journal of Cutaneous Immunology and Allergy 2024; 7:13418.

日本人の成人アトピー性皮膚炎患者30名の前腕内側の標的部位に対して、タピナロフクリーム1%を1日1回、8週間塗布する非盲検・非対照・単施設試験を実施した。

背景

■ タピナロフは非ステロイド外用であるアリル炭化水素受容体作動薬である。
■ アトピー性皮膚炎(AD)の治療において、タピナロフは有効性と許容可能な安全性プロファイルを示している。

目的

■ ADの患者における、タピナロフの皮膚バリア機能に対する改善効果を評価することを目的とした。

方法

■ 本研究は、非盲検・非対照・単施設での試験である。
■ 日本人のAD患者(N=30、20歳以上)を対象とした。
■ 患者は前腕内側の標的部位に、タピナロフクリーム1%を1日1回、8週間塗布した。
■ 主要評価項目は、8週目における標的罹患部位での角層水分量(SCH)と経表皮水分喪失量(TEWL)のベースラインからの変化とした。

結果

■ 標的罹患部位におけるSCHの平均値は、ベースラインで13.656 AU、4週目で16.904 AU、8週目で16.423 AUだった。

■ 標的罹患部位のSCHは、ベースラインから8週目にかけて平均2.826 AU有意に増加した(p=0.0433)。
■ 標的罹患部位におけるTEWLの平均値は、ベースラインで17.35 g/m²/hr、4週目で10.01 g/m²/hr、8週目で9.52 g/m²/hrだった。
■ 標的罹患部位のTEWLは、ベースラインから8週目にかけて平均-8.03 g/m²/hr有意に減少した(p<0.0001)。

■ 標的罹患部位におけるADの臨床徴候は、経時的に改善した。
■ 重篤、重度、治療関連の有害事象は報告されなかった。

結論

■ タピナロフによる治療は、AD患者においてSCHの増加とTEWLの減少をもたらし、皮膚バリア機能に対する潜在的な改善効果を示している。

 

 

論文のまとめ

✅️ 標的罹患部位における角層水分量(SCH)は、治療開始時の13.656 AUから8週目に16.423 AUまで有意に増加した(p=0.0433)。
【簡単な解説】タピナロフを使用することで、皮膚の表面の水分量が増え、乾燥が改善されました。
✅️ 経皮水分蒸散量(TEWL)は、治療開始時の17.35 g/m²/hrから8週目に9.52 g/m²/hrまで有意に減少した(p<0.0001)。
【簡単な解説】皮膚から水分が逃げていく量が大きく減少しました。これは皮膚のバリア機能(水分を守る能力)が改善されたことを意味します。

 

 

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