アトピー性皮膚炎の新規抗炎症外用薬ジファミラストは、ステロイド外用薬に替わる、子どもも使える安全な選択肢として期待される。
■ アトピー性皮膚炎は、良くなったり悪くなったりを繰り返す、慢性的な皮膚の病気です。
■ かゆみや湿疹だけでなく、睡眠障害やストレスなども引き起こし、患者さんの生活に大きな影響を与えます。
■ ステロイド外用薬は、長期に同じ場所に使い続けると副作用の懸念が大きくなるため、より安全で効果的な新しい薬が求められていました。
■ 2021年以降、小児でも使用できる新規抗炎症薬が使用できるようになり、そのうちの一つが外用PDE4阻害薬ジファミラストです。
■ しかし、他剤との比較は不十分でした。
■ そのようななか、治療にかかる費用と効果のバランスについての報告がありました。
Nakahara T, Noto S, Matsukawa M, Takeda H, Zhang Y, Kondo T. Cost-Effectiveness Study of Difamilast 1% for the Treatment of Atopic Dermatitis in Adult Japanese Patients. Dermatology and Therapy 2024.
中等度から重度のアトピー性皮膚炎を持つ日本人成人患者を対象に、ジファミラスト1%とデルゴシチニブ0.5%、プラセボとの費用対効果を1年間にわたり比較検討した。
目的
■ 日本では、ジファミラストが有効な治療薬であることが証明されているが、費用対効果は不明である。
■ そこで本研究は、中等度から重度のアトピー性皮膚炎(AD)を持つ日本人成人患者におけるジファミラスト1%とデルゴシチニブ0.5%の比較、および全重症度のAD患者におけるプラセボとの比較について、日本の公的医療の観点から費用対効果を検討することを目的とした。
方法
■ 本分析は、日本の公的医療の観点から費用対効果モデルを用いて実施された。
■ このモデルは、湿疹重症度スコア(EASI)に基づいて「寛解」「軽症」「中等症」「重症」の4つの健康状態を定義した。
■ 分析期間は1年間とし、期間が短いため割引率は適用しなかった。
■ アンカー付きマッチング調整間接比較で推定された患者の割合をモデルに組み込んだ。
■ さらにモデルには文献からのデータを取り入れた。
■ 主なモデル評価項目は、質調整生存年(QALY)、費用、増分費用効果比(ICER)を含む評価項目とした。
■ すべての価格は2018年4月から2019年3月の価格水準で円建てで表示した。
■ 結果の頑健性を評価するため、一元感度分析と確率的感度分析(PSA)を実施した。
結果
■ ジファミラスト1%におけるデルゴシチニブ0.5%およびプラセボとの比較における費用対効果は、それぞれQALYあたり827,054円および1,518,657円だった。
■ 質調整生存年(QALY)では、ジファミラスト1%が0.79 QALY、デルゴシチニブ0.5%が0.77 QALYでした。
■ 増分費用効果比(ICER)は827,054円/QALYとなり、日本の支払意思額の閾値である500万円/QALYを下回りました。
■ PSAの結果、ジファミラスト1%のデルゴシチニブ0.5%およびプラセボとの比較において、500万円/QALY閾値を下回る確率は、それぞれ66.6%および99.6%であった。
結論
■ 結果から、日本の公的医療の観点において、ディファミラスト1%は中等度から重度のAD患者におけるデルゴシチニブ0.5%との比較、および全重症度のAD患者におけるプラセボとの比較で、より費用対効果の高い治療選択肢であることが示唆された。
論文のまとめ
✅️ジファミラスト1%の1年間の総治療費は758,967円で、デルゴシチニブ0.5%の747,515円と比較してわずか11,452円の差だった。
【簡単な解説】 新薬を使った場合の1年間の医療費(薬代、診察料、検査代など)は約76万円で、既存薬を使った場合と比べて約1万円しか変わらないことがわかった。
✅️質調整生存年(QALY)において、ジファミラスト1%は0.79 QALY、デルゴシチニブ0.5%は0.77 QALYを示し、増分費用効果比(ICER)は827,054円/QALYと算出され、日本の支払意思額の閾値である500万円/QALYを大きく下回った。
【簡単な解説】 ジファミラストはデルゴシチニブと比べて、患者の生活の質をわずかに改善し(0.02ポイント)、その改善に必要な追加費用(約83万円)は、日本の医療制度が許容できる金額(500万円)を大幅に下回っていることがわかった。
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