小児喘息の治療に、抗菌薬であるアジスロマイシンが有効であるという報告があります。
■ 小児喘息は、気道に慢性的な炎症が起こる病気で、救急受診や入院が必要になることもあります。
■ しかし、通常の治療薬(吸入ステロイドなど)の効果が不十分な患者さんもいます。
■ 喘息の子どもさんの4-64%で、クラミジアやマイコプラズマといった病原尾節物が見つかるそうです。そして、これらに有効なアジスロマイシンという抗生物質は、気管支喘息自体に保険適用があるわけではありませんが、これらの細菌に効果があり、炎症も抑える作用があります。
■ 実際に、喘息発作や増悪を減らすのではないかという報告もあります。
■ では、メタアナリシスではどのような結果になるでしょうか?
■ 最近の報告を確認してみました。
※アジスロマイシン(ジスロマック)は、気管支喘息や喘息発作そのものに保険適用はありません。また、日本では、感染症に対する3日間の内服に保険適用があり、長期内服は、感染症に対しても基本的にできません。
※後半で解説していますが、気管支喘息に抗菌薬を長期内服すること、マクロライド系抗菌薬の内服にはリスクもあります。
Pan X, Liu Y, Luo J, Li S, Diao S, Li H, et al. The efficacy and safety of azithromycin in treatment for childhood asthma: A systematic review and meta-analysis. Pediatric Pulmonology 2022; 57:631-9.
18歳未満の持続性または慢性喘息の小児1633名(0.25-17歳)を対象に、アジスロマイシン+抗喘息薬による治療群と抗喘息薬単独による治療群を比較検討するメタアナリシスを実施した。
背景
■ アジスロマイシン(AZI)は、限られた一貫性のないデータにもかかわらず、小児喘息に対する使用が増加している。
目的
■ 小児喘息におけるAZIの有効性と安全性を評価することを目的とした。
方法
■ 小児喘息の治療におけるランダム化比較試験(RCT)を含めるために7つのデータベースを検索した。
■ 4名のレビュアーが独立して記録をスクリーニングした。
■ Risk of Bias 2を用いてRCTの質を評価した。
■ 二値データからのリスク比と95%信頼区間、連続データからの平均差と95%信頼区間をプールした。
結果
■ 17研究から19の適格な報告が含まれた。
■ 6-14歳の慢性持続性喘息児において、AZI+ブデソニド+β2作動薬群の増悪の発生率は、ブデソニド+β2作動薬群と比較して低かった(4[13%] vs 19[63%], p<0.05)。
■ 慢性持続性喘息児において、AZI+抗喘息薬は抗喘息薬単独と比較して、治療後の小児喘息コントロールテストスコア(平均差=2.97; 95%信頼区間, 2.39-3.54)を改善した。
■ 慢性持続性喘息児において、AZI+抗喘息薬は抗喘息薬単独と比較して、治療後の1秒量予測値/努力性肺活量%(平均差=10.24%; 95%信頼区間, 6.44%-14.03%)と治療後のピークフロー予測値%(平均差=7.00%; 95%信頼区間, 2.53%-11.47%)を改善した。
■ AZIと他の薬剤の併用における最も一般的な有害反応は、消化器症状であった。
結論
■ AZIは、持続性喘息を有する6歳以上の小児において、一部の臨床症状と肺機能の改善に有益である可能性がある。
■ しかし、さらなる研究が必要である。
論文のまとめ
✅️ 6-14歳の慢性持続性喘息児において、アジスロマイシン併用群の喘息発作発生率は13%(4/30例)であり、非併用群の63%(19/30例)と比較して有意に低かった。
【簡単な解説】 アジスロマイシンを使用したグループでは喘息発作を起こした子どもが30人中4人だったのに対し、使用しなかったグループでは30人中19人が発作を起こしており、薬を追加することで発作が減ったことを示している。
✅️ アジスロマイシン併用群では、非併用群と比較して1秒量予測値/努力性肺活量比が10.24%改善し、最大呼気流量も7.00%向上した。
【簡単な解説】 肺の機能を調べる検査で、アジスロマイシンを追加したグループの方が呼吸機能が改善したことを示している。
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