アレルギー性鼻炎治療で点鼻薬が推奨される中、経口薬との効果との比較に関するメタアナリシスが実施されました。
■ アレルギー性鼻炎の治療薬には、主に2種類あります。
すなわち、鼻に直接スプレーする薬(点鼻薬)と、飲み薬(経口薬)です。
■ 2020年に発表された国際的な治療ガイドラインでは、症状が中程症以上の患者には点鼻薬を使うことが勧められています。
■ その理由は、効果が早く現れ、より高い効果が期待できるからです。
■ しかし、この推奨を裏付けるエビデンスは、実はあまり確実なものではありませんでした。
■ また、米国治療ガイドラインでも、点鼻ステロイド薬を第一選択として推奨していますが、飲み薬との比較データが十分ではありません。
■ そして、そもそも日本では、経口薬のほうが先に使われることのほうが多いでしょう。
■ このような背景から、点鼻薬と経口薬のどちらがより効果的なのかを示すために、メタアナリシスが実施されました。
Torres MI, Gil-Mata S, Bognanni A, Ferreira-da-Silva R, Yepes-Nuñez JJ, Lourenço-Silva N, et al. Intranasal Versus Oral Treatments for Allergic Rhinitis: A Systematic Review With Meta-Analysis. J Allergy Clin Immunol Pract 2024.
12歳以上の季節性または通年性アレルギー性鼻炎患者を対象とし、35研究(データベース検索4,631件から選定)において、点鼻ステロイド薬または点鼻抗ヒスタミン薬と、経口抗ヒスタミン薬またはロイコトリエン受容体拮抗薬の効果を比較検討した。
背景
■ アレルギー性鼻炎の治療には、点鼻薬と経口薬が用いられている。
目的
■ 点鼻ステロイド薬または点鼻抗ヒスタミン薬と、経口抗ヒスタミン薬またはロイコトリエン受容体拮抗薬を比較し、アレルギー性鼻炎の症状と生活の質の改善における有効性を評価するために、メタアナリシスを含むシステマティックレビューを実施した。
方法
■ 12歳以上の季節性または通年性アレルギー性鼻炎患者を評価し、点鼻ステロイド薬または抗ヒスタミン薬と経口抗ヒスタミン薬またはロイコトリエン受容体拮抗薬を比較した無作為化比較試験について、4つの文献データベースと3つの臨床試験データセットを検索した。
■ TNSS(Total Nasal Symptom Score;総鼻症状スコア)、TOSS( Total Ocular Symptom Score;総眼症状スコア)、RQLQ(Rhinoconjunctivitis Quality of Life Questionnaire;鼻結膜炎生活の質調査票)、有害事象の発生、有害事象による中止についてメタアナリシスを実施した。
■ エビデンスの確実性は、GRADEを用いて評価した。
結果
■ 35研究を対象とし、そのほとんどが季節性アレルギー性鼻炎患者を評価し、バイアスリスクは不明確だった。
■ すべての評価項目において、点鼻薬の優位性が認められた。
■ 点鼻ステロイド薬は経口抗ヒスタミン薬と比較して、TNSS(平均差 -0.86; 95%CI, -1.21から-0.51; I2=70%)、TOSS(平均差 -0.36; 95%CI, -0.56から-0.17; I2=0%)、RQLQ(平均差 -0.88; 95%CI, -1.15から-0.61; I2=0%)の改善において、より有効であり、これらのほとんどは臨床的に意味のある改善に関連していた。
■ TNSSの改善における点鼻ステロイド薬の優位性は、経口ロイコトリエン受容体拮抗薬との比較でも認められた(平均差 -1.05; 95%CI, -1.33から-0.77)。
■ 点鼻抗ヒスタミン薬は経口抗ヒスタミン薬と比較して、TNSS(平均差 -0.47; 95%CI, -0.81から-0.14; I2=0%)とRQLQ(平均差 -0.31; 95%CI, -0.56から-0.06; I2=0%)の改善において、より有効でだった。
結論
■ 無作為化比較試験の結果から、季節性アレルギー性鼻炎において、点鼻薬は経口薬と比較して症状と生活の質の改善により効果的であることが示唆された。
論文のまとめ
✅️点鼻ステロイド薬は経口抗ヒスタミン薬と比較して、総鼻症状スコア(平均差 -0.86)、総眼症状スコア(平均差 -0.36)、鼻結膜炎生活の質調査票(平均差 -0.88)のすべてにおいて有意な改善を示した。
【簡単な解説】鼻からスプレーするステロイド薬は、飲み薬と比べて、鼻づまりやくしゃみなどの症状、目のかゆみなどの症状、日常生活の過ごしやすさのすべてにおいて、より良い効果がありました。
✅️点鼻抗ヒスタミン薬は経口抗ヒスタミン薬と比較して、総鼻症状スコア(平均差 -0.47)と鼻結膜炎生活の質調査票(平均差 -0.31)において、より効果的な改善を示した。
【簡単な解説】 鼻からスプレーする抗ヒスタミン薬も、飲み薬と比べて、鼻の症状や日常生活の過ごしやすさの改善に、より効果的でした。
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