アレルゲン免疫療法は、喘息発作だけでなく風邪のリスクも減らす?

アレルギー性喘息は免疫低下で感染症や発作リスクが高まる疾患です。

■ アレルギー性喘息の患者さんは、ウイルス感染症にかかりやすく、症状も重くなりやすいことがわかっています。

■ 特にリスクが高くなるのは、以下の3つが重なる場合とされています。

 1) アレルギーの原因物質に対する反応がある
2) アレルゲンに実際に触れる
3) ウイルス感染症にかかる

■ これらが重なると、喘息発作が起こりやすくなり、入院が必要になるリスクが大きく上昇します。

■ 感作があると風邪も引きやすくなる可能性高まるともいえるでしょう。
■ では、アレルゲン免疫療法(AIT)を行うと、これらのリスクを減らせることができるでしょうか?

※アレルゲン免疫療法は、基本的にアレルギー性鼻炎(場合によっては気管支喘息にも)に保険適用がある治療方法です。

Woehlk C, Von Bülow A, Ghanizada M, Søndergaard MB, Hansen S, Porsbjerg C. Allergen immunotherapy effectively reduces the risk of exacerbations and lower respiratory tract infections in both seasonal and perennial allergic asthma: a nationwide epidemiological study. European Respiratory Journal 2022; 60:2200446.

デンマークの全国レジストリにおいて、1995-2014年の期間中にアレルゲン免疫療法を受けた18-44歳の喘息患者2,688名(通年性アレルギー性喘息1,249名、季節性アレルギー性喘息1,439名)を対象とした前向き研究を検討した。

背景

■ アレルギー性喘息は、呼吸器感染症とその増悪リスクの増加と関連している。
■ この感受性が季節性アレルギーまたは通年性アレルギーによって条件付けられているかは不明である。

目的

■ 喘息における下気道感染症と増悪のリスク要因として、通年性アレルギーと季節性アレルギーを比較し、このリスクがアレルゲン免疫療法(AIT)によって軽減できるかを調査することである。

方法

■ 本研究は、1995-2014年にAITで治療を受けた18-44歳を対象とした、前向き全国レジストリに基づく研究である。

■ AITの種類と抗喘息薬の使用に基づき、患者を通年性アレルギー性喘息(PAA)と季節性アレルギー性喘息(SAA)の2群に分類した。
■ 下気道感染症に対する抗生物質と増悪に対する経口ステロイド薬の使用データを、AIT開始前(ベースライン)とAIT完了後3年間(追跡期間)で分析した。

結果

■ AITで治療を受けた喘息患者2,688名を特定し、そのうち1,249名がPAA、1,439名がSAAだった。
■ ベースライン時、SAA患者の方が増悪が多く(23.8%対16.5%、p<.001)、下気道感染症には差がなかった。

■ 3年間の追跡期間中、増悪の顕著な減少がみられ、PAAで平均57%、SAAで74%減少した。
■ また、下気道感染症もPAAで17%、SAAで20%の有意な減少が観察された。

 

 

論文のまとめ

✅️ アレルゲン免疫療法による3年間の追跡期間中、喘息の増悪は通年性アレルギー性喘息で57%、季節性アレルギー性喘息で74%、減少した。
【簡単な解説】 新しい治療法により、喘息の発作が大幅に減りました。特に季節性アレルギーの人では、発作が4分の1以下になりました。

✅️ 下気道感染症の発生率は、通年性アレルギー性喘息で17%、季節性アレルギー性喘息で20%の有意に減少した。
【簡単な解説】 気管支炎などの呼吸器の感染症にかかりにくくなりました。通年性でも季節性でも、同じように改善が見られました。

 

 

※論文の背景や内容の深掘り、個人的な感想は、noteメンバーシップにまとめました。

※登録無料のニュースレター(メールマガジン)は、一部有料会員向けも始めていますが、定期的に無料記事も公開予定です。さまざまなテーマを深堀り解説していきますので、ご興味がございましたらリンクからご登録ください。

 

このブログは、私の普段の勉強の備忘録やメモを記録しているものですので、細かい誤字脱字はご容赦ください。
基本的に医療者向けで、申し訳ありませんが、質問には基本的にお答えしておりません。

知識の共有を目的に公開しておりますが、追加して述べる管理人の意見はあくまでも個人としての私見です。
所属するいかなる団体の立場も代表するものではありませんし、すべての方に向いているという情報でもありません。予めご了承いただきたく存じます。

このブログの『リンク』は構いません。
しかし、文章やアイデアを盗用・剽窃・不適切な引用したり、許可なくメディア(動画を含む)に寄稿することはご遠慮ください。
クローズドな場での勉強会などに使用していただくことは構いません。
Instagram:2ヶ月で10000フォロワーを超えました!!!

Xでフォローしよう