食物アレルギー治療は「完全除去」から変化しています。卵アレルギーにおいて、極微量から開始する治療法の有効性が報告されています。
■ 鶏卵アレルギーは、日本で最もよく見られる食物アレルギーの一つです。
■ そして食物アレルギーの治療は、完全除去…ではなく、「必要最小限の除去」が基本です。
■ そもそも、鶏卵を完全に除去を続けると、かえってアレルギーが治りにくくなり、6歳までにアレルギーになるリスクが14倍も高くなるという報告もあります。
■ そこで、昭和大学病院では、2019年から、極微量を負荷する「超低用量経口負荷試験」という新しい方法を導入したそうです。
■ その結果はどうだったのでしょうか?最近、Allergology International誌に報告されました。
Yamashita K, Mayu M, Imai T, Takagi T, Okawa M, Honda A, et al. Efficacy of very-low-dose oral food challenge in children with severe hen egg allergy: A retrospective, single-center case series. Allergology International 2024; 73:543-9.
2012年1月から2023年3月までに、過去6ヶ月以内に1/32個の鶏卵で明らかなアレルギー反応を示した患者522名(低用量群411名、超低用量群111名)を対象とし、低用量群では1/32全卵から、超低用量群では1/100全卵から開始する経口負荷試験を実施した。
背景
■ 2019年、完全除去を避けるため、重症の鶏卵アレルギー患者に対して超低用量の経口食物負荷試験(OFC)を導入した。
■ 本研究では、超低用量OFCの全量負荷までの有効性を検討した。
方法
■ 過去6ヶ月以内に1/32個の鶏卵(卵白タンパク100 mg)以下で明らかなアレルギー反応を示した患者を対象とした。
■ 超低用量群において、2年以内に全量OFC(1/2個の鶏卵:卵白タンパク1600 mg)に到達しなかった患者は除外した。
■ 2019年以前に低用量OFCを実施した群(低用量群)と2019年以降に超低用量OFC(1/100個の鶏卵:卵白タンパク32 mg)を実施した群(超低用量群)の間で、全量OFCの通過率を後方視的に比較した。
■ Kaplan-Meier分析を用いて、全量OFC通過までの期間を評価した。
結果
■ 低用量群411例、超低用量群111例を登録した。
■ OFC開始時の年齢中央値は、低用量群2.2歳[1.5-3.6]、超低用量群2.1歳[1.4-3.2]だった。
■ 卵白特異的IgEおよびオボムコイド特異的IgE抗体価は、低用量群でそれぞれ38.3 kUA/L(12.5-72.9)、21.0 kUA/L(8.3-46.2)、超低用量群で49.8 kUA/L(18.8-83.9)、32.1 kUA/L(15.6-67.8)だった。
■ 4年間で、低用量群の70%、超低用量群の95%が全量OFCを通過し、有意差を認めた(log-rank検定、P < 0.001)。
結論
■ 超低用量OFCは、重症鶏卵アレルギー患者の全量OFCを通過する可能性が高まる。
論文のまとめ
✅️ 4年間の経過観察で、低用量群の70%に対し超低用量群の95%が全量(1/2個の鶏卵)の経口負荷試験を通過し、統計学的に有意な差を認めた。
【簡単な解説】より少ない量から始めたグループの方が、最終的に半分の卵を食べられるようになった人の割合が多かった。
✅️ 治療開始年齢による比較では、4歳未満で開始した群は約90%以上が目標量を達成したのに対し、4歳以上で開始した群では約30%の達成率に留まった。
【簡単な解説】この治療は4歳より前に始めた方が、より良い結果が得られた。
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